先週、スマホに1通のSMSが届きました。
「お客様に伝えたいことがあります。至急ご確認ください」
差出人は知らない番号。文面だけ見ると、宅配便の不在通知や、契約している何かのサービスの案内にも見えます。僕は一瞬、指がタップに向かいました。
結論から言うと、これは開きませんでした。ただ、あとで調べてみたら、僕が引っかかりかけたこのタイプのSMSに、2026年7月下旬ごろから新しい仕掛けが加わっていることを知りました。
しかも警察庁の統計を見ると、この手の詐欺はまだ増え続けています。今日は、その中身を整理します。
警察庁が公表した最新の数字
2026年9月4日、警察庁は「令和8年7月末における特殊詐欺の認知・検挙状況等について」を発表しました。
特殊詐欺全体の認知件数は26,051件、被害総額は2,108億1千万円。前年の同じ時期と比べて件数は3,709件・16.6%増、被害額は632億8千万円・42.9%増です。
手口別に見ると、今回取り上げる「架空料金請求詐欺」は認知件数3,688件、被害額86億5千万円。前年同期比で13.7%増えています。SNS型投資詐欺やニセ警察詐欺ほど派手な伸び率ではありません。ただ、件数だけで見ると、実はオレオレ詐欺の2,350件よりも多く、特殊詐欺の中で3番目に件数が多い手口です。
身近さで言えば、こちらのほうが多くの人に届いている数字だと思います。僕のところに届いたSMSも、この統計の1件になっていたはずです。
電話番号を使わない、新しい架空請求の手口
架空料金請求詐欺そのものは、昔からある手口です。「サイトの利用料金が未納です」「至急連絡してください」というメールやSMSが届き、書かれた番号に電話をかけると、オペレーターに電子マネーでの支払いを迫られる。ここまでは、聞いたことがある人も多いと思います。
新しいのは、そこから先の導線です。
2026年7月下旬ごろから、SMSに電話番号を直接書かず、代わりにURLを載せておく手口が確認されるようになりました。リンク先の偽サイトには「お電話はこちら」というボタンが用意されていて、押すとブラウザ上でインターネット電話が立ち上がり、そのまま犯行グループの誰かにつながる仕組みです。
つまり、SMSの中に「怪しい電話番号」が存在しません。電話をかけさせるところまでは同じなのに、通報や検索でその番号を特定しにくくなっています。
実際に確認されている文面
報道されている例をもとに、流れを整理するとこうなります。
まず届くSMSは、NTTファイナンスのような実在する大手企業の名前をかたり、「未払い金についての内容をご確認ください」といった文面です。最近の手口では、受信者の名前を本文に入れることで、信ぴょう性を高めているケースもあるそうです。
リンクを開くと、偽サイトには「お支払い期限が本日となっています。速やかにお支払いください」という文言と、「お客様の未納金額99,600円」という具体的な金額が表示されます。そして下部に「お電話はこちら」のボタン。
99,600円という数字は、絶妙な設定だと思います。10万円ちょうどではなく、少し下回る。妙にリアルで、事務的に処理された料金のように見えます。実際に何かの引き落としで、似たような端数を見たことがある人もいるんじゃないでしょうか。
なぜ「電話番号」をやめたのか
これまでの架空請求は、SMSや自動音声に電話番号が書かれていました。その番号は、被害の相談を受けた警察や通信会社が把握し、比較的早く利用停止に持ち込める対象でした。加えて最近は、通話音声を解析して詐欺を検知するサービスも広がっています。電話番号を固定して使い続ける手口は、犯行グループにとって足がつきやすくなっていたはずです。
一方、ブラウザ上のインターネット電話は、通常の電話回線を経由しません。かけるたびに違う経路を使うことも技術的には可能で、番号ベースの遮断や検知の網をすり抜けやすくなります。
犯行グループが「通報されたら止まる電話番号」から「サイトを作り替えれば済むボタン」に手口を移した、と考えると、彼らなりに合理的な選択をしているとも言えます。皮肉な話ですが、対策が進むほど、こうやって手口のほうも形を変えてくるんやと思います。
電話をかけた後、何を言われるか
ここが一番、注意してほしい部分です。
報道によると、このタイプの詐欺で電話をかけた被害者は、オペレーターからこう説明されるケースがあるそうです。
「利用していないという事実確認が取れた場合、救済措置があります。一度お支払いいただければ、審査のうえ返金されます」
一見、良心的な対応に聞こえます。「払えば戻ってくる」と言われれば、払うハードルはぐっと下がります。
ただ、これは典型的な二段構えの手口です。最初の支払いをさせたあとに、「返金のためには手数料が必要」「保証金を追加で振り込んでください」といった名目で、さらにお金を要求してくるパターンが少なくありません。一度払ってしまうと、相手は「払う人」だと判断し、追加の連絡を続けてきます。
「払えば返ってくる」という言葉が出た時点で、その電話は詐欺だと考えたほうがいいです。正規の企業が、未納料金の督促の電話口で、その場で返金の約束をすることはありません。
見分け方は、意外とシンプル
僕がこの手口を調べていて、一番はっきりしていると感じたのは、次の2点です。
NTTファイナンスをはじめ、大手の通信会社や決済会社が、料金未納の通知をSMSで送ることは基本的にありません。契約者向けの案内は、公式アプリやマイページ、書面での郵送が中心です。「SMSで未納の連絡が来た」時点で、まず疑ってかかっていいと思います。
もう1つは支払い方法です。コンビニで電子マネーやギフトカードを買わせて、その番号を伝えさせる。この支払い方法を求められたら、内容にかかわらず詐欺だと考えて間違いありません。正規の企業が、電子マネーでの支払いを唯一の手段として指定してくることはないからです。
逆に言うと、この2つさえ覚えておけば、文面がどれだけ本物らしくても、名前が入っていても、判断に迷う場面はかなり減ります。
SMSが来たら、その場でやること
もしこの手のSMSが届いたら、次の手順だけ覚えておけば十分です。
本文中のURLは開かない。開いてしまっても、そこで電話をかけない。この2つを守るだけで、被害までの導線はほぼ断ち切れます。
心当たりがある契約なら、SMSのリンクではなく、公式サイトのブックマークや、契約時に控えた正規の連絡先から確認します。NTTファイナンスの場合、公式の相談窓口が用意されています。
家族、特に離れて暮らす親にも、「未納料金のSMSは、リンクも電話番号も使わない」という一点だけ伝えておくと安心です。うちの親にも、今度電話したときに話しておこうと思っています。
不審なSMSや、実際に金銭を要求された場合の相談先は、消費者ホットラインの「188(いやや)」、警察相談専用電話の「#9110」です。
もし払ってしまったら
万が一、電子マネーの番号を伝えてしまったり、振り込んでしまったりした場合は、時間との勝負になります。
電子マネーなら発行会社のサポート窓口に、振り込みなら振込先の金融機関のコールセンターに、すぐ連絡してください。銀行振り込みの場合は「振り込め詐欺救済法」という制度があり、犯人の口座に資金が残っていれば、被害者に分配金として戻ってくる可能性があります。時間が経つほど資金は引き出されてしまうので、迷っている時間はもったいないです。
警察にも被害届を出しておくこと。恥ずかしいと感じて後回しにする人もいますが、同じ手口で狙われている人は他にもいます。届け出ることが、次の被害を減らすことにもつながります。
この記事は、どんな人に関係あるか
正直に書くと、こういうSMS自体を普段からほぼ見ていない人、来てもすぐ削除できている人には、この記事は不要です。今日から何かを変える必要はありません。
一方で、僕みたいに一瞬タップしかけた経験がある人、あるいは自分より親のスマホのほうが心配だという人には、知っておいて損はない話だと思います。
「電話番号じゃなくてボタンだから」という理由で油断すると、今の時代はそこにこそ罠が仕込まれています。仕組みが変わっても、見るべきポイントは「お金の話が出たかどうか」で変わりません。
本記事は、家計改善を実践する会社員が、自身の経験と警察庁の公表情報、報道機関の情報をもとに執筆しています。数字は2026年9月時点のものです。手口や統計は今後変わる可能性があるため、最新情報は警察庁・各企業の公式サイトをご確認ください。
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