「会社を辞めずに、まとまった期間で学び直せたらいいのに」と思ったことがあります。
資格の勉強、大学院、職業訓練、ITスキルの習得。夜や休日だけで少しずつ進める方法もありますが、仕事が忙しい時期にぶつかると、正直しんどいです。僕も仕事終わりに勉強しようとして、机には座ったものの、動画を10分見て寝落ちしたことがあります。
ただ、現実に「じゃあ1ヶ月休んで勉強します」となると、一番こわいのは生活費です。有給休暇では足りない。休職扱いで無給になるなら、住宅ローンや家賃、保育料、食費はどうするのか。
そこで2025年10月にできたのが、教育訓練休暇給付金です。
名前は少し固いですが、ざっくり言うと、会社を辞めずに30日以上の無給休暇を取って学び直す人に、雇用保険から生活費の一部を出す制度です。厚生労働省は、離職せず教育訓練に専念するため、自発的に休暇を取得して仕事から離れる場合に、基本手当に相当する給付として賃金の一定割合を支給する制度だと説明しています。
この記事では、会社員がこの制度を使えるのか、どこでつまずきやすいのかを、家計目線で整理します。
まず結論:全員がすぐ使える制度ではない
最初に大事なところから言うと、教育訓練休暇給付金は「勉強したい人なら誰でも申請できる給付金」ではありません。
主なポイントはこの4つです。
- 雇用保険の一般被保険者であること
- 会社の就業規則や労働協約などに教育訓練休暇制度があること
- その制度に基づいて、連続30日以上の無給休暇を取ること
- 事業主と合意し、ハローワークで必要な手続きをすること
つまり、本人が「学びたい」と思うだけでは足りません。会社側に制度があり、休暇取得について会社と合意できることが前提です。
ここが、この制度の一番大きな壁だと思います。
「教育訓練給付金」と何が違うのか
ややこしいのが、似た名前の制度がすでにあることです。
よく知られているのは教育訓練給付金です。これは、厚生労働大臣が指定する講座を受けて修了した場合に、受講費用の一部が戻ってくる制度です。
たとえば一般教育訓練給付金なら、受講者が払った教育訓練経費の20%、上限10万円が支給されます。特定一般教育訓練なら基本は40%、上限20万円。専門実践教育訓練なら、さらに大きい給付になる場合があります。
一方で、今回の教育訓練休暇給付金が支えるのは、講座代そのものというより、休んでいる間の生活費です。
ざっくり分けると、こうです。
| 制度 | 主に支えるもの | 使う場面 |
|---|---|---|
| 教育訓練給付金 | 講座費用 | 働きながら、または離職後に指定講座を受ける |
| 教育訓練休暇給付金 | 休暇中の生活費 | 会社を辞めず、無給休暇で教育訓練に専念する |
この違いを混同すると、「講座代が戻る制度なのか」「給料が止まる期間を支える制度なのか」が分からなくなります。今回の記事で扱うのは後者です。
30日以上の「無給」休暇が条件になる
教育訓練休暇給付金の制度概要では、連続した30日以上の無給の教育訓練休暇を取得する場合に給付を受けられるとされています。
ここで見落としやすいのは、「30日以上」と「無給」の2つです。
1週間だけ資格試験前に休む、という使い方では対象になりません。逆に、有給休暇をまとめて使って休む場合も、制度の趣旨とは違います。あくまで、会社の制度に基づく教育訓練休暇で、賃金が出ない期間がある人を支える仕組みです。
30日というと、家計への影響はかなり大きいです。
たとえば手取り25万円の人が1ヶ月無給になると、単純に25万円分の入金が消えます。家賃8万円、食費6万円、通信費1万円、保険やサブスクで2万円、子ども関連で3万円。固定費だけでかなり埋まります。
給付金があるとはいえ、満額の給料がそのまま出る制度ではありません。使うなら、最低でも生活費1〜2ヶ月分の余裕資金は別に見ておいたほうが安心です。
会社の制度がないと、本人だけでは進めにくい
この制度で一番現実的に引っかかりそうなのが、会社側の準備です。
厚生労働省は、労働者が制度を利用するには事業主と合意した上で休暇を取得する必要があると案内しています。また、事業主側には、就業規則等の整備や、教育訓練休暇開始後の賃金支払状況の届出などが必要になります。
つまり、会社に教育訓練休暇制度がなければ、いきなり「国の給付金があるので来月から休みます」とは言いにくい。
人事制度として、
- 教育訓練休暇を認める対象
- 休暇の期間
- 無給・有給の扱い
- 休暇中の社会保険や復職の扱い
- 業務引き継ぎのルール
このあたりを会社側が整理しておく必要があります。
大企業や人材育成に積極的な会社では導入しやすいかもしれませんが、中小企業だと「制度としてまだ存在しない」というケースも多そうです。制度があるかどうかは、まず就業規則や社内ポータル、人事への確認が必要です。
どんな人に向いている制度か
僕が見たかぎり、この制度が合いやすいのは、次のような人です。
- 会社を辞めるほどではないが、まとまった学習期間が必要
- 資格取得や専門職への転換など、学ぶ目的がはっきりしている
- 会社側にも、その学びが将来の業務に生きる説明ができる
- 生活費1〜2ヶ月分の余裕資金がある
- 復職後の働き方までイメージできている
逆に、なんとなく「今の仕事がしんどいから一度離れたい」という理由だけだと、使いにくい制度です。それなら休職制度、転職活動、通常の教育訓練給付金、失業給付など、別の制度や選択肢を考えたほうが合う場合もあります。
「学び直し」と聞くと前向きな言葉に見えますが、家計としては無給期間を作る判断です。ここはきれいごと抜きで、慎重に見たほうがいいと思います。
使う前に確認したい5つのこと
実際に検討するなら、いきなり講座を申し込む前に、次の5つを確認しておきたいです。
1. 自分が雇用保険の一般被保険者か
会社員でも、働き方によって雇用保険の加入状況は違います。給与明細で雇用保険料が引かれているか、会社に確認しましょう。
2. 会社に教育訓練休暇制度があるか
就業規則、社内規程、人事制度を確認します。制度がない場合、すぐ使うのは難しい可能性があります。
3. 休みたい期間が30日以上連続か
短期集中の講座でも、休暇が30日未満なら対象外になり得ます。講座の期間と会社の休暇制度が合っているかを見ます。
4. 無給期間の家計が持つか
給付金があるとしても、振込時期や金額にはズレが出る可能性があります。家賃、ローン、保険料、保育料、クレカ引き落としを先に書き出しておくべきです。
5. 復職後にどう回収するか
資格を取る、職種を変える、社内異動につなげる、収入アップを狙う。学び直しの出口がないと、休んだ分の収入減だけが残ります。
手取り25万円の人が1ヶ月休むなら、何を考えるか
ここはざっくり試算です。
手取り25万円の人が、30日以上の無給休暇を取るとします。毎月の固定費がこんな感じだったとします。
| 支出 | 月額 |
|---|---|
| 家賃 | 80,000円 |
| 食費 | 60,000円 |
| 通信費 | 10,000円 |
| 保険 | 8,000円 |
| 水道光熱費 | 18,000円 |
| サブスク | 5,000円 |
| その他固定費 | 30,000円 |
| 合計 | 211,000円 |
給料が止まる月に、この21.1万円はほぼそのまま出ていきます。ここに講座代、教材費、交通費が乗ります。
教育訓練休暇給付金は生活費を支える制度ですが、家計管理としては「あとから入るお金」よりも「先に出ていくお金」を見るほうが安全です。
僕なら、少なくとも次の3つを先にやります。
- 休暇前に生活費2ヶ月分を別口座に置く
- クレカ払いのサブスクや年払いを一度確認する
- 講座代に教育訓練給付金が使えるかも別で確認する
制度を使うこと自体が目的になると危ないです。目的は、休むことではなく、休んだあとに働き方や収入をよくすることです。
まとめ:会社員の学び直しに使えるが、会社制度と家計準備がカギ
- 教育訓練休暇給付金は、2025年10月に創設された雇用保険の制度
- 会社を辞めず、教育訓練に専念するために連続30日以上の無給休暇を取る人の生活費を支える
- 本人だけで完結せず、会社の就業規則等に基づく制度と事業主との合意が必要
- 講座代を支える教育訓練給付金とは役割が違う
- 使う前に、雇用保険、会社制度、30日以上の休暇、家計の余力、復職後の出口を確認したい
学び直しは、勢いだけで始めると家計に響きます。でも、制度を知って準備しておけば、「会社を辞める」以外の選択肢が増えるのも事実です。
転職するか、今の会社に残るか。その二択だけでなく、いったん休んで学び、戻って働くという道が少しずつ制度として整ってきた。そこは、会社員にとって悪くない変化だと思います。
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本記事は、NISA・家計改善を実践する会社員が、自身の経験と公的機関の情報をもとに執筆しています。
本記事は2026年9月時点の情報に基づいています。教育訓練休暇給付金の要件・手続きは、厚生労働省およびハローワークの公表情報によります。制度内容は今後変更される場合があるため、最新情報は勤務先の人事担当および住居所を管轄するハローワークに必ずご確認ください。