この記事で分かるのは、「高配当株を利回り以外の何で選ぶか」と「その条件で東証に何社残るか」です。
配当利回り3%以上の上場企業は、2026年9月18日時点で1,405社あります。
僕はこれまで、利回りの高い順に並べて上から見ていました。
でも先週、3メガバンクの数字を並べて気づきました。
2020年3月に利回り6.1%だった三菱UFJが、いまは2.5%。
配当は3.8倍に増えたのに、株価が10倍になったので利回りが下がった。
利回りは「配当 ÷ 株価」なので、株価が動けば勝手に変わります。
つまり利回りの高い順に並べると、上のほうには「株価が下がった会社」が混ざる。
それを買うと、次に来るのは減配です。
だから今回は、利回りではなく「配当を払い続けられるか」を数字で見る条件を7つ決めて、1,405社を全部かけました。
7つの条件と、線を引いた理由
| # | 条件 | なぜこの線か |
|---|---|---|
| 1 | 配当利回り 3.3%以上、7%以下 | 下限は「高配当」と呼べる最低ライン。上限を置いたのは、7%超は株価が崩れた会社がほとんどだったため |
| 2 | 自己資本比率 60%以上 | 借金が4割以下。不況でも配当を止めずに耐える体力の目安。一番効いた条件 |
| 3 | ROE 8%以上(5%以上なら自己資本比率75%以上で可) | 稼ぐ力。財務が固い会社はROEが低く出るので例外を1つ |
| 4 | 配当性向 30〜80% | 30%未満は配当に消極的、80%超は利益が減るとすぐ減配 |
| 5 | PER 20倍以下 | 割高な成長株を入れない |
| 6 | 時価総額 100億円以上 | 売買できる最低ライン。上限なし |
| 7 | 10年間で減配ゼロ | 「払い続ける会社」の実績。特別配当の消滅も減配と数えた |
金融(銀行・保険・リース・証券)は最初から外しています。
自己資本比率の物差しが他の業種と違うためです。
REITとETFも個別株の対象からは外しました(J-REITはETF1本で持つ前提)。
数字は、IR BANKが公開している各社のPER・PBR・株主資本比率・ROE・配当実績と、Yahoo!ファイナンスの配当利回りランキング(2026年9月18日更新)によるものです。配当予想は、各社が公式発表している2027年3月期の予想値を使いました。
自己資本比率はIR BANKの株主資本比率を使ったので、各社の決算短信の値と小数点以下で違うことがあります。
1,405社が40社になるまで
条件を1つずつかけた結果です。
| 段階 | 残った社数 |
|---|---|
| 配当利回り3%以上(東証全体) | 1,405社 |
| 東証プライム・スタンダードで、金融・REIT・ETFを除く | 947社 |
| 自己資本比率60%・ROE・配当性向・PER・時価総額 | 205社 |
| 10年間で減配ゼロ | 44社 |
| 無配から始めた会社・株式併合で数字が歪む会社を除く | 40社 |
一番大きく減ったのは、205社から44社になる「10年減配なし」の段階です。
財務の条件を通った会社でも、10年のあいだに1回は配当を減らした会社が8割ありました。
減らした年で一番多いのは2021年、次が2020年。
コロナの2年を減配せずに乗り切った会社は、東証全体で44社しかなかった。
ここが、今回いちばん驚いた数字です。
条件を変えると、何社になるか
「その線は厳しすぎないか」と自分でも思ったので、条件を1つずつ動かして数え直しました。
財務5条件の段階(205社)を基準にしています。
| 動かした条件 | 社数 | 基準との差 |
|---|---|---|
| 基準(利回り3.3%・自己資本60%・ROE8%・性向30〜80%・PER20・100億) | 205社 | — |
| 自己資本比率を50%に緩める | 269社 | +64 |
| 自己資本比率を40%に緩める | 331社 | +126 |
| 自己資本比率を70%に厳しく | 121社 | −84 |
| ROEを5%に緩める | 243社 | +38 |
| ROEを10%に厳しく | 128社 | −77 |
| 配当性向の上限を100%に緩める | 209社 | +4 |
| 配当性向の下限をなくす | 217社 | +12 |
| PERを25倍に緩める | 206社 | +1 |
| PERを15倍に厳しく | 173社 | −32 |
| 時価総額を300億円以上に | 129社 | −76 |
| 時価総額を1,000億円以上に | 41社 | −164 |
| 配当利回りを4%以上に | 117社 | −88 |
| 配当利回りを4.5%以上に | 57社 | −148 |
この表から分かることが3つあります。
① 自己資本比率が、社数を一番動かす。
60%を50%にすると64社増え、70%にすると84社減る。
この条件が、実質的に「どんな会社を選ぶか」を決めています。
② 配当性向とPERは、ほとんど効いていない。
上限を100%にしても4社しか増えない。
つまり財務が固い会社は、もともと配当性向もPERも常識的な範囲に収まっている。
この2つは「念のための安全装置」で、選別の主役ではありません。
③ 利回りを4.5%以上にすると、57社まで減る。
そこから10年減配なしを重ねると、ほぼ残らないと思います。
「利回り4.5%以上で、財務が固くて、10年減配なし」は、東証にはほぼ存在しない組み合わせでした。
利回りを求めるほど、減配リスクを飲むことになる。
その関係が、数字で見えました。
40社の全体像
| 項目 | 40社の平均 |
|---|---|
| 配当利回り | 4.17% |
| PER | 12.9倍 |
| PBR | 1.28倍 |
| 自己資本比率 | 74.3% |
| ROE | 10.9% |
| 配当性向 | 52.7% |
| 時価総額の中央値 | 684億円 |
セクターは16に分かれ、一番多い建設でも5社。
1社2.25%ずつ持つと、最大セクターは11%です。
金融・商社・電力・不動産は0社になりました。
半分は時価総額1,000億円未満で、名前を聞いたことがない会社が多いと思います。
みんなが知っている会社は、みんなが買っているので株価が上がり、利回りが3.3%を割る。
残るのは、地味で、借金が少なく、配当を減らしたことがない会社でした。
10年連続で増配している8社
40社のうち、減配ゼロどころか10年連続で増配している会社が8社ありました。
| コード | 銘柄 | 事業 | 利回り | 自己資本比率 | ROE | 配当性向 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 8130 | サンゲツ | インテリア商社(壁紙首位) | 4.82% | 64% | 12.5% | 68% |
| 4671 | ファルコホールディングス | 臨床検査受託 | 4.41% | 68% | 8.1% | 63% |
| 5970 | ジーテクト | 自動車骨格部品(ホンダ系) | 4.31% | 60% | 8.1% | 32% |
| 4547 | キッセイ薬品工業 | 医薬品 | 4.24% | 85% | 8.1% | 53% |
| 9364 | 上組 | 港湾物流 | 4.21% | 74% | 8.0% | 74% |
| 9795 | ステップ | 学習塾(神奈川) | 3.82% | 90% | 10.0% | 50% |
| 7292 | 村上開明堂 | 自動車ミラー最大手 | 3.47% | 78% | 6.6% | 47% |
| 4205 | 日本ゼオン | 化学(合成ゴム) | 3.30% | 65% | 11.2% | 42% |
派手な会社は1つもありません。
壁紙、港の荷役、塾、ミラー。
10年間、毎年配当を増やしてきた会社の顔ぶれは、こういう感じでした。
村上開明堂はROE6.6%で条件3の8%を割っていますが、自己資本比率78%の例外枠で入っています。
残りの32社は、noteでセクターごとに1社ずつ見ていく予定です。
自分でやるなら、この順番
同じスクリーニングは、無料のサイトだけでできます。
- Yahoo!ファイナンスの「配当利回りランキング」で、3.3%以上の会社を上から見る
- 気になった会社をIR BANKで開き、株主資本比率・ROE・PER・配当性向を見る
- 同じページの「配当」タブで、10年分の実績配当を上から下まで見る。1回でも減っていたら外す
- 残った会社の業種を株探で確認し、同じ業種に偏らないようにする
3の「10年分を目で見る」が一番時間がかかりますが、ここを飛ばすと意味がありません。
利回りと自己資本比率だけなら1分で分かるので、まず持っている株を1社、この順番で見てみてください。
この条件が向かない人
正直に書きます。
- 利回り5%以上を狙う人:この条件だと5%超は矢作建設とヨータイの2社だけ。利回り重視なら別の物差しが要ります
- 大きな金額を入れる人:時価総額150億円未満が4社あり、売買が細い。数百万円単位で1社に入れる人には向きません
- 値上がりも狙う人:PBR1.28倍・ROE10.9%は「安定」の数字で、「成長」の数字ではありません
- 決算を追わない人:「10年減配なし」は過去の実績で、来年の保証ではない。決算ごとに条件から外れた会社を見直す前提です
僕自身は、この条件を「買う銘柄を探す」より先に、「いま持っている株を当てる」ことに使うつもりです。
利回りが高い理由が「株価が下がっただけ」ではないか。それを見る物差しとして作りました。
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まとめ
- 利回りの高い順に選ぶと、上のほうに「株価が下がった会社」が混ざる
- 7条件のうち、社数を決めているのは自己資本比率60%と10年減配なしの2つ
- 配当性向とPERはほとんど効かない。財務が固い会社は、もともとその範囲に収まっている
- 東証1,405社 → 40社。コロナの2年を減配せずに乗り切った会社は44社だけ
- 利回り4.5%以上で財務が固く10年減配なし、という組み合わせは東証にほぼ無い
- 10年連続増配の8社は、壁紙・港湾・塾・ミラーなど地味な会社ばかり
高配当株は「利回りの高い会社」ではなく、「配当を減らさない会社」を探すもの。
数字で絞ったら、そう思うようになりました。
※本記事は2026年9月18日時点の株価と各社の直近決算をもとにした、機械的なスクリーニングの結果です。数字はIR BANK・Yahoo!ファイナンス・株探の公開データによります。特定の銘柄の売買をすすめるものではなく、過去10年減配していないことは将来減配しないことを保証しません。投資の判断はご自身の責任でお願いします。