「退職金1,500万円、とりあえず全額定期預金に入れておけば安心でしょ」——65歳でそう判断した父が、80歳になったとき手元に残っていたのは300万円だった。15年間で1,200万円を取り崩しながら、インフレで購買力も下がり続けた。同じ金額を運用しながら取り崩す戦略を取っていれば、80歳時点で1,100万円以上残っていた計算だ。
60代の資産運用に「攻め」は不要だ。だが「何も考えない」は最悪の選択だ。
1. 60代からの「攻守切り替え」戦略:年金と退職金の黄金バランス
定年を迎える60代で最初にやるべきことは、全体の資産構成を把握することだ。
退職金の平均額は約1,500万円(厚労省調査)。これに65歳からの年金(月額約20万円)が加わる。考えるべきは「どの資産をいつ使うか」という優先順位だ。
具体例を挙げる。60歳で1,500万円の退職金を受け取った田中さん(65歳まで働く)を想定する。
- 60〜65歳(働いている期間): 退職金は手をつけず、給与と貯蓄で生活。退職金は預金・債券で「守りの資産」として運用。
- 65〜75歳(年金生活の前半): 年金が月20万円入るので、退職金は月2〜3万円程度の取り崩しに留める。インフレに強い株式投信も一部保有する。
- 75歳以上(医療費が増える時期): 預金比率を高め、流動性を確保する。
「時間軸で分ける」考え方が60代資産運用の核だ。一気に取り崩してしまい、85歳で資金が尽きるという悲劇は「計画性がなかった」ケースがほとんどだ。
2. 実践的な「4つの資産配置」で老後資金を守る
60代からの資産運用で重要なのは、リスク許容度を明確にすることだ。
60〜70代向け資産配置の目安:
- 預金:30〜40%(毎月の生活費の2年分)
- 債券・国債:20〜30%(安定した利息収入)
- 株式投信:20〜30%(インフレ対策)
- REITs(不動産投資信託):10〜20%(配当収入)
2,000万円の資産がある場合の例:
- 預金:600万円(生活費24ヶ月分を確保)
- 債券:500万円(年利1.5%で年7.5万円の利息)
- 株式投信:600万円(年利3〜4%での増加を期待)
- REIT:300万円(年利3〜4%の配当で月7,500円)
この配置なら年間30〜40万円の運用利益が生まれ、インフレによる資産の目減りを防げる。
「でも投資は怖いから全額預金にしたい…」——その気持ちは理解できる。だが現在の預金金利は0.001%程度で、2,000万円を全額預金にすると年間利息は200円だ。上記配置なら年30万円が見込め、30年で900万円の差が生まれる。この違いが85歳時点での生活の豊かさを左右する。
3. 今、20〜40代のあなたがやるべき「親世代の資産把握」
「親の老後資金について話すのはタブー」と思っているなら逆だ。親が元気なうちに把握しておくことが、家族全体の資金計画を守る。
ステップ1:年金の見込み額を確認する 親が「ねんきん定期便」を受け取っているなら、65歳時点の「見込み年金額」を一緒に確認する。月額いくらもらえるかで、必要な追加貯蓄額が決まる。
ステップ2:退職金制度の有無を確認する 勤続年数と退職金規程から、おおよその退職金額を把握する。この数字が老後計画の「出発点の資産」になる。
ステップ3:自分自身の老後設計に応用する 親の状況を把握することは、20年後の自分に何が必要かを学ぶ最良の機会だ。今の親が何に困っているかを知り、同じ課題を自分の計画に織り込む。
今日できる最小アクション: 親の「ねんきん定期便」を一緒に確認するか、自分自身の企業型DCや積立NISAの残高と運用配分を今日確認する。
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