「老後に3,000万円必要と聞いて、もう諦めようと思った」——35歳の私がそう打ち明けると、ファイナンシャルプランナーは静かに言った。「計算してから諦めてください」と。実際に計算したら、私が準備すべき金額は1,080万円だった。3,000万円の3分の1以下だ。漠然とした数字に怯えていた3年間が、もったいなかった。
1. 公式の「老後資金」より、あなたの人生設計が大事
金融庁が発表した「老後資金2000万円問題」は夫婦で月額約26万円の支出を想定した数字だ。あなたに当てはまるかどうかは別の話だ。
老後の生活費は個人差が非常に大きい。同じ65歳でも、持ち家か賃貸か、配偶者がいるか、趣味にお金をかけるか——こうした要素で全く変わる。
現実的な計算方法はシンプルだ。現在の生活費を見直し、「老後は何が減って、何が増えるか」を考えることだ。
- 減る支出: 通勤費、仕事用被服費、子どもの教育費
- 増える支出: 医療費、介護費、趣味・旅行費
50代の会社員Aさんの例:現在の月額生活費が35万円の場合、通勤費3万円と子ども教育費5万円が減り、医療費が2万円増えるなら老後は月額29万円で生活できる可能性がある。月額29万円 × 12ヶ月 × 30年(65〜95歳)= 1,044万円が一つの目安になる。
「でも物価が上がったら計算が狂う…」——その懸念は正しい。だから今の金額に年2%のインフレ調整を加えて計算するのが安全だ。30年後の購買力を考慮すると、必要額は1,044万円の1.5〜1.8倍程度に増える。それでも3,000万円よりはるかに少ない。
2. 年金だけでは足りない額を「見える化」する
老後資金を考える時、多くの人が忘れるのが「年金がいくらもらえるのか」という基本情報だ。
厚生労働省の調査では、会社員が受け取る平均的な年金額は月額約22万円(夫婦で約36万円)だが、これはあくまで平均値だ。あなたの給与や勤続年数によって大きく異なる。
年金額を調べる方法は3つだ。
- ねんきんネットで自分の記録を確認(最も正確)
- 毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」を確認
- 年金事務所で相談員に聞く
例えばあなたが受け取れる年金が月額20万円で、老後の生活費が月額28万円なら足りない分は月額8万円・年間96万円だ。65歳から95歳(30年間)で補うなら約2,880万円の貯蓄が必要になる。この計算を自分の数字でやることが、漠然とした不安を具体的な目標に変える第一歩だ。
3. 今からできる現実的な準備は「3つの層」で考える
第1層:年金(国からの自動収入) 変えられない部分だが、繰り下げ受給で増やせる。1年遅らせるごとに月額0.7%増え、70歳受け取りなら月額42%増加する。
第2層:退職金と企業年金 会社の退職金制度を確認したことがあるか。人事部に問い合わせて退職金の想定額を把握することは極めて重要だ。平均的には1,000万〜2,000万円程度が支給される企業が多い。
第3層:自分で貯める(投資・預金) 年金と退職金の「穴」を埋めるのが自助努力だ。30代なら毎月2万円、40代なら毎月4万円を、つみたてNISAやiDeCoで積み立てる。この習慣が65歳時に500万〜1,000万円の資産を生み出す。
今日できる最小アクション: ねんきんネット(nenkin.go.jp)にアクセスして、自分の年金見込み額を確認する。その数字と現在の月額支出を比較して、月いくら不足するかを計算する。この計算結果が、あなたの準備すべき金額の根拠になる。
新NISAを始めるなら: 手数料ゼロ・クレカ積立でポイント還元が高いSBI証券または楽天証券がおすすめです。