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医療費が増える老後のための健康保険の基礎

「親が入院して月30万円の医療費請求書が来た」——友人からそう聞いて頭が真っ白になった。だが実際に支払ったのは3万円だったという。残りの27万円は健康保険がカバーしていた。この仕組みを知っていれば、老後の医療費への漠然とした恐怖は消える。知らないままでいる方が、むしろ危険だ。


1. 老後の医療費はいくら必要か?実際の数字から考える

厚生労働省の調査によると、70歳以上の1人当たり年間医療費は約77万円だ。これは現役世代の約3倍だ。しかし実際にあなたが負担する金額は、健康保険の仕組みによってはるかに低くなる。

70歳以上で月30万円の医療サービスを受けた場合、窓口負担は1割(3万円)が基本だ。残りの27万円は健康保険がカバーしてくれる。さらに高額療養費制度を使えば、月10万円程度の自己負担で済む仕組みになっている。

「医療費 = 自分の全額負担」という思い込みが、老後への過剰な恐怖を生んでいる。重要なのは制度を知り、実際の自己負担額を正確に把握することだ。ただし健康診断・差額ベッド代・健康増進のための費用は保険対象外なので注意が必要だ。

60代から70代にかけての医療費負担の変化を把握しておくだけで、老後資金計画の精度が大きく上がる。

2. 転職や退職で健康保険が変わる——65歳までの準備が鍵

会社を退職する際、健康保険の選択肢が3つある。任意継続、国民健康保険への加入、家族の扶養に入るかだ。

退職時点で60歳なら任意継続がおすすめだ。月3〜4万円程度で最大2年間、勤めていた会社の健康保険に入り続けられる。その後は国民健康保険に切り替わる。国民健康保険料は年間15〜30万円(自治体と収入で異なる)が目安だ。

実際の計算例:年金収入200万円の方の場合、国民健康保険料は年間約18万円・介護保険料が年間約2万円。合わせて月1.7万円程度だ。これは会社員時代の天引きより少ないことが多い。

「でも退職してからゆっくり考えればいい…」——それでは遅い。任意継続の手続きは退職後20日以内が期限だ。退職日が決まったら、翌日から何の保険に入るかを事前に決めておく。65歳になると後期高齢者医療制度に自動移行し、保険料の仕組みが再び変わる。

3. 今からできる——医療費を減らす3つの具体的アクション

第一:定期的な健康診断 40代からの健康診断は自分で費用を負担することが多いが、年5,000〜10,000円の投資で後年の医療費50万円以上の差が生まれることもある。高血圧・高コレステロール・糖尿病は早期発見で薬代を大幅に削減できる。

第二:セルフメディケーション税制の活用 ドラッグストアで購入した指定医薬品の領収書を保存し、年12,000円を超えた分は所得控除できる。年1万円程度が戻ってくる家庭も多いのに、知らない人がほとんどだ。毎年の確定申告時に領収書を集めるだけで実現できる。

第三:介護保険料を視野に入れた貯蓄計画 65歳から介護保険料(年3〜5万円)が加わる。さらに要介護状態になると自己負担が月1〜5万円発生する。「年金 + 月3万円の医療・介護費」という予算で老後を計画すると現実的だ。

これら3つを実行している人と何もしていない人では、70代以降で年間20万円以上の差が生まれることも珍しくない。

今日できる最小アクション: 勤めている会社の健康保険の「任意継続保険料」を確認する。退職後の保険料がいくらになるかを知るだけで、60代以降の生活費の見積もりが具体的になる。



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