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高齢期の住まい選択。持ち家か施設か

「親の家、屋根の葺き替えで250万円かかった」——70歳の親が電話してきた。年金生活に入って4年目の出来事だ。修繕費の積立など一切していなかった。退職金の残りから捻出したが、その後の生活が一気に苦しくなった。持ち家は「タダで住める」ではない。予測不可能な費用を一生払い続ける「別の家賃」だ。


1. 持ち家の「隠れた費用」があなたの年金を蝕む

「持ち家なら家賃がかからないからお得」——この思い込みが多くの高齢者を追い詰める。

総務省の家計調査によると、65歳以上の持ち家世帯の住宅関連支出は月平均1万7,000円だ。固定資産税・火災保険・修繕費などの合計だ。一見安く見えるが、大型修繕が発生すると様変わりする。

築30年の家では屋根の葺き替え(150〜300万円)、外壁塗装(100〜200万円)、給湯器交換(40〜80万円)が数年の間に集中することも珍しくない。年金生活に入ってから数百万円の修繕費が突然必要になる——これが多くの高齢者が経済的に困窮する主因だ。

さらに問題なのは、認知症などで介護が必要になった時だ。持ち家に住み続けられず施設に移るとなれば、空き家状態が長く続き売却価格が大幅に下がる。20年前に2,000万円で購入した郊外の一戸建てが、売却時に500万円以下になるケースも珍しくない。1,500万円の損失だ。

2. 施設の「月額費用」は実は計算しやすい

有料老人ホームなどの施設暮らしは、一見費用が高く見える。首都圏の良質な施設なら月額20〜30万円だ。だが、この金額に何が含まれているか考えてほしい。家賃・食事・光熱費・医療介護サービス・安否確認・清掃——生活に必要なほぼ全てが込まれている。

対して持ち家の場合:

合計すると月20〜40万円だ。施設と大きく変わらない。むしろ、介護が必要な状態になると施設の方が効率的で、持ち家継続より生涯支出が数千万円少なくなるという研究結果もある。

「でも家は資産として残るから…」——老後の不動産は必ずしも資産にならない。地方の物件は売れないケースが増えており、売却にかかる費用や税金を引くと実質的な資産価値がマイナスになることもある。

3. あなたが今すぐやるべき「住まい方の診断」

判断基準は3つだ。

①現在の資産額 手持ちの現金・投資資産が退職金を含め5,000万円以上あれば、どちらの選択肢も可能だ。4,000万円以下なら持ち家の大型修繕に備える積立が必須で、それが貯蓄ペースを落とす可能性がある。

具体例:60歳時点で4,000万円の資産を持つAさんの場合、持ち家継続なら年間修繕費100万円・住宅税30万円 = 年130万円の追加支出。25年間で約3,250万円となり、85歳時点の資産は650万円になる。

②健康寿命への自信度 健康寿命が85歳まで続くと見込めれば、施設への早期シフトは損になる。だが70代で何らかの介護が必要になる可能性があれば、施設への「人生設計の組み込み」が有効だ。親の介護状況を参考にする。

③現在の家の築年数と修繕履歴 築20年以上で大型修繕をしていないなら、近い将来に数百万円の修繕費が必要になる。この現実から目を背けると、老後資金が突然目減りする。

今日できる最小アクション: 現在の家の築年数と、過去10年間の修繕履歴を確認する。屋根・外壁・給湯器の最終交換時期をリストアップして、今後10年間の修繕費を概算する。この数字が「持ち家を続けるコスト」の現実だ。



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