「扶養の範囲で働いているのに社会保険に入れと言われた」「副業収入が増えたけど、どこが境目なの?」
年収の「壁」は毎年のように制度が変わり、2024年〜2026年にかけて特に大きな変化が続いています。知らないまま働き続けると、思わぬ手取り減につながることも。
この記事では、会社員の配偶者・パートタイム労働者・副業を持つ人が「自分はどこに当てはまるか」を判断できるよう、制度の仕組みをわかりやすく整理します。
この記事でわかること
- 年収の壁の種類(100万・103万・106万・130万・150万・201万)
- 2024年10月〜の社会保険適用拡大で何が変わったか
- パート・副業収入と壁の関係
- 壁を超えた場合の手取りの変化シミュレーション
- 「働き損」を避けるための考え方
- よくある質問(FAQ)
年収の「壁」は何種類あるか
「壁」と呼ばれる年収のラインは複数あります。それぞれ異なる税金・社会保険の制度に関係しています。
| 年収の壁 | 関連する制度 | 何が変わるか |
|---|---|---|
| 100万円 | 住民税 | 住民税の課税が始まる |
| 103万円 | 所得税 | 所得税の課税が始まる。配偶者の「配偶者控除」が受けられなくなる |
| 106万円 | 社会保険(厚生年金・健康保険) | 一定条件で会社の社会保険に加入義務が発生 |
| 130万円 | 健康保険(被扶養者の認定) | 配偶者の扶養から外れて自分で健康保険・国民年金に入る |
| 150万円 | 配偶者特別控除 | 配偶者特別控除の額が減り始める |
| 201万円 | 配偶者特別控除 | 配偶者特別控除が完全になくなる |
この中で特に2024〜2026年に変化があったのが106万円の壁です。
106万円の壁:2024年10月から大きく変わった
106万円の壁とは
「パートで年収106万円(月収8.8万円)以上になると、社会保険(厚生年金・健康保険)に加入しなければならない」という基準です。
正確な加入条件は以下のすべてを満たす場合:
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上(残業代・通勤手当・賞与は除く)
- 2ヶ月を超える雇用の見込みがある
- 学生でない
2024年10月〜:適用企業の規模拡大
| 時期 | 対象企業 | 概要 |
|---|---|---|
| 〜2022年9月 | 501人以上の企業 | 大企業のみ対象 |
| 2022年10月〜 | 101人以上の企業 | 中規模企業に拡大 |
| 2024年10月〜 | 51人以上の企業 | さらに拡大 |
| 2026年以降 | 全企業(規模不問)に向けて議論継続 | 段階的に拡大見込み |
2024年10月から51人以上の企業が対象になったため、以前は「うちは100人以下だから関係ない」と思っていた人も対象になった可能性があります。 自分の勤務先の従業員数を確認しましょう。
130万円の壁:こちらは企業規模に関係なし
130万円の壁とは
「年収130万円を超えると、配偶者(会社員)の健康保険の扶養から外れる」という基準です。
扶養から外れると:
- 自分で国民健康保険に加入 → 年間保険料が数万〜十数万円
- 国民年金保険料を払う → 月約1.7万円(2026年度)
年収が130万円を超えると、社会保険料の負担が増えて手取りが減る「逆転現象」が起きるケースがあります。
注意点:106万円と130万円のどちらが先に適用されるか
- 勤務先が51人以上:106万円の壁が先に適用。月収8.8万円以上かつ20時間以上なら会社の社会保険へ
- 勤務先が50人以下:106万円の壁は対象外。130万円の壁のみ適用
壁を超えた場合の手取りシミュレーション
パターン:年収130万円 → 年収135万円に増やした場合
| 項目 | 年収130万円(扶養内) | 年収135万円(扶養外) |
|---|---|---|
| 社会保険料 | 0円(扶養のため) | 約20〜25万円/年 |
| 所得税・住民税 | 数万円 | 数万円(ほぼ変わらず) |
| 手取り | 約127万円 | 約108〜112万円 |
年収が5万円増えたのに手取りが約15〜19万円減る「逆転現象」が起きています。
この逆転現象が解消されるのは、一般的に年収160〜170万円以上になってから。
「壁を超えて働く」判断のポイント
| 年収の目安 | 判断の基準 |
|---|---|
| 〜103万円 | 所得税なし・扶養維持(最も手取りが多い) |
| 103〜130万円 | 所得税・住民税発生。社会保険は場合による |
| 130〜160万円 | 社会保険料の負担増で手取りが逆転しやすい危険ゾーン |
| 160万円以上 | 手取りが扶養内を上回り始める。働く量を増やすなら160万円以上を目指す |
「少しだけ増やそう」は逆効果になりやすい。130万円を超えるなら160万円以上を目指すか、超えないよう管理するかの二択が合理的です。
副業収入と壁の関係
会社員が副業をしている場合、壁との関係は少し複雑です。
副業収入は「給与」か「事業所得」か
- 給与として受け取る副業(バイト・派遣など):社会保険上、本業+副業の合算で判定される場合あり
- フリーランス・業務委託の副業:社会保険の加入条件は本業の勤務先のみで判定(副業の収入は関係しない)
副業がフリーランス・業務委託の場合
副業の収入は社会保険の「130万円の壁」の判定に直接は含まれません。ただし年間20万円超の副業所得は確定申告が必要で、住民税が増えることで会社に副業が発覚するリスクがあります。
住民税の「普通徴収」を選んで申告することが副業バレを防ぐ基本対策です(詳しくは確定申告ガイド参照)。
「年収の壁・支援強化パッケージ」(政府の対応策)
2023年以降、政府は年収の壁問題に対処するための助成金制度を設けています。
事業主向け助成金
「キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)」
- 社会保険適用によって手取りが減る労働者の賃金を引き上げた企業に助成
- 1人当たり最大50万円(条件あり)
これにより、勤務先がこの助成金を活用すれば、社会保険加入後も賃金が引き上げられて手取りを維持できるケースがあります。勤務先の人事・総務に制度の活用状況を確認することをおすすめします。
家計管理ツールを活用する
パート収入・副業収入・社会保険料・税金を合わせて家計全体で管理するには、クラウド型の家計管理・会計ツールが便利です。
マネーフォワード クラウド確定申告
副業収入・給与収入を一元管理。確定申告書類を自動作成できるクラウド会計ソフト。住民税の普通徴収設定もガイドあり。
副業収入がある会社員は、年末調整だけでは申告が完結しません。確定申告ソフトで各収入・控除をまとめて管理すると、計算ミスや申告漏れを防げます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 今年から51人以上の企業が対象になったと聞きました。自分が対象かどうかどう確認すればいいですか?
A. 会社の人事・総務部に「うちは106万円の壁(特定適用事業所)に該当しますか?」と確認するのが確実です。または、会社からすでに「社会保険加入の案内」が来ている場合は対象に該当しています。
Q2. 夫の会社の扶養に入っているかどうか、どこで確認できますか?
A. 配偶者(夫)の勤務先から発行された「健康保険証」に「被扶養者」として名前が記載されていれば扶養内です。不明な場合は夫の会社の健康保険組合に問い合わせできます。
Q3. 「106万円の壁」を超えて社会保険に加入するメリットはありますか?
A. あります。社会保険(厚生年金)に加入すると、将来の年金が増えます。また傷病手当金(病気・ケガで働けなくなった場合に給与の約2/3を最大1年6ヶ月受給できる制度)が利用できるようになります。手取りは一時的に減りますが、長期的な保障が手厚くなるという側面もあります。
Q4. 副業のフリーランス収入が増えてきました。扶養から外れるのはいつですか?
A. フリーランスの副業収入は、本業の勤務先での社会保険適用(106万円の壁)には原則影響しません。ただし年収(本業含む)が130万円を超えると扶養認定の再確認が必要になる場合があります。健康保険組合によって判断基準が異なるため、加入している健康保険組合に確認することをおすすめします。
Q5. 103万円の壁はなくなると聞きましたが?
A. 2024年末〜2025年にかけての税制改正議論で「103万円の壁を178万円に引き上げる」という提案がありましたが、2026年時点では段階的な見直しが検討されている状況です。確定した制度変更については、国税庁・財務省の公式発表や報道で最新情報を確認してください。
まとめ:壁を正しく把握して損しない働き方を
年収の壁は「超えてはいけない」ものではなく、「超えるならしっかり超える」という判断が重要です。
| 状況 | 推奨する行動 |
|---|---|
| 年収が130万円に近い | 130万円以内に抑えるか、160万円以上を目指すか、どちらかに振り切る |
| 勤務先が51〜100人規模 | 106万円の壁の対象になったか人事に確認する |
| 副業収入が増えてきた | 確定申告・住民税の普通徴収で手続きを正しく行う |
| 社会保険加入で手取りが減った | 勤務先のキャリアアップ助成金活用状況を確認する |
制度は毎年変わります。年に一度、自分の年収・家族構成・勤務形態を見直す習慣が、長期的な損を防ぐ最善策です。
本記事はFP(ファイナンシャルプランナー)の知識をもとに執筆しています。
本記事は2026年時点の制度・社会保険規定に基づいています。社会保険や年収の壁に関する制度は変更される場合があります。最新情報は厚生労働省・日本年金機構の公式サイトをご確認ください。