28歳のころ、月末になると口座残高が数百円になっていた。「このままでは老後が詰む」という焦りで初めて不動産投資を調べ、「表面利回り8%」という物件広告を見て興奮した。しかし、諸費用を計算したら実質利回りは4%台。購入後に年30〜50万円の固定資産税と修繕費が重なれば、月々の手残りはほぼゼロだった。知識なしに買っていたら、2,000万円の物件で生涯赤字になっていたかもしれない。
利回りだけで判断するな——「表面利回り」と「実質利回り」の違い
不動産投資で最初に目にするのが「利回り」という数字だ。「表面利回り8%」という広告に飛びつきたくなるのは当然だが、それは罠の入り口だ。
表面利回りは「年間家賃÷物件価格」で計算した見た目の数字に過ぎない。2,000万円の物件から年間160万円の家賃が入れば「表面利回り8%」になるが、現実にはここから固定資産税(年30〜50万円)・管理費(月1〜3万円)・修繕積立金(月1〜2万円)・火災保険・空室損失が積み上がる。築20年以上なら大規模修繕費も迫っている。
これらを差し引いた実質利回りは、表面利回りより2〜3%低くなる。表面利回り8%に惹かれた物件の実質利回りが4〜5%だった、という悲劇が毎年繰り返されている。
「でも計算が難しくてよくわからない…」という人でも、3ステップで判断できる:
ステップ①:全経費を洗い出す 固定資産税・管理費・修繕積立金・保険・空室月の損失を合計する。年間家賃の20〜30%が消える前提で計算する。
ステップ②:実質利回りを計算する (年間家賃-年間経費)÷物件価格=実質利回り。5%を下回るなら慎重に検討する。
ステップ③:利回り5%以上の物件だけを候補に残す 表面利回り8%以上の物件を候補に絞れば、経費を引いた後も5%台が見込める。
立地は「需要」で選ぶ——駅距離よりも大切な3つのチェックポイント
「駅から徒歩10分以内が鉄則」とよく言われるが、中古マンション投資では「将来、誰が住みたいと思う場所か」という需要の観点がより重要だ。
確認すべき3点はこれだ:
- 人口動態:過去10年で人口増加率が3%以上の地域を選ぶ。毎年1%以上減っている地域は空室リスクが高く、10年後に入居者を確保できない可能性がある
- 周辺の都市機能:スーパーが800m以内、病院が500m以内にあると空室率が5年間で3分の1に減少するというデータがある
- 地域の平均家賃の推移:過去5年間で家賃が上昇傾向なら需要が高い証拠だ
「でも地方の物件の方が安くて利回りが高い…」という声は理解できる。 しかし人口減少エリアの高利回り物件は、空室リスクが現実化した瞬間に収益がゼロになる。安さより需要の持続性を優先する。
築年数は「修繕サイクル」と「減価償却期限」で判断する
「中古物件なら安い」という単純な考え方は危険だ。中古物件には隠れたコストがある。
マンションの大規模修繕サイクルは一般的に12年周期だ:
- 築5年の物件なら、7年後に200〜400万円の修繕費がかかる可能性がある
- 築15年なら修繕が差し迫っており、今後3年以内に実施される可能性が高い
- 築25年以上なら既に修繕が済んでいるが、次のサイクルが来る
購入前に「修繕積立金の残高」と「直近の大規模修繕の実施時期」を必ず確認する。修繕積立金が極端に少ない管理組合は、将来の追加費用請求リスクが高い。
また減価償却の観点では、木造22年・RC造47年という耐用年数を意識することで、売却時の税金計算にも影響する。出口戦略まで見据えて物件を選ぶことが、長期の収益を守る唯一の方法だ。