会社員には、ずっと前から「育休中は社会保険料が免除される」という仕組みがあります。厚生年金も健康保険も、育休の間は払わなくていいのに、将来の年金は減らない。育児中の家計にとって、これはかなり大きい助けです。
でも——自営業やフリーランス(国民年金の第1号被保険者)には、これがありませんでした。 子どもが生まれても、育児で仕事をセーブしても、国民年金保険料(月およそ1万7千円)は容赦なく毎月引き落とされる。「会社員だけズルくない?」と感じていた人も多いはずです。
その“穴”が、ついに埋まります。先に結論です。
2026年10月から、国民年金 第1号被保険者の子育て世帯も、子が1歳になるまで国民年金保険料が免除されます。 しかも所得制限なし(事業所得がいくらあってもOK)、将来の年金は減りません(払ったものとして満額カウント)、父親も対象。ただし——自動ではなく“申請制”。知って動いた人だけが得をします。
「自営業・フリーランスで、これから子どもを持つ/今まさに0歳を育てている」人には、地味に効くニュースです。中身を正確に見ていきます。
何が“不公平”だったのか
まず、公的年金の3タイプで育児中の扱いがどう違っていたかを整理します。
- 第2号(会社員・公務員):2014年から、育休中は厚生年金・健康保険が免除。将来の年金は減らない
- 第3号(第2号に扶養される配偶者):もともと自分で保険料を負担していない
- 第1号(自営業・フリーランス・農業・無職・学生):育児中も国民年金保険料を満額払い続けるしかなかった
つまり、育児期間の保険料負担がまるまる残っていたのは第1号だけ。ここが「会社員だけ優遇されている」と言われてきた部分です。
一応、2019年から産前産後期間(出産前月〜後2ヶ月の計4ヶ月)だけは母親の保険料が免除される仕組みは先にできていました。でも、免除されるのは出産直後の数ヶ月だけ。その後も育児は続くのに、保険料はまた戻ってくる。今回の新制度は、この“その後”をカバーする拡張版、と考えると分かりやすいです。
新制度の中身(2026年10月開始・公式情報で確認)
日本年金機構の案内をもとに、事実を整理します。
① 開始時期 2026年(令和8年)10月から。2026年10月1日以降に育児期間免除の対象となる人が使えます。
② 対象者 国民年金 第1号被保険者の実父母・養父母。自営業・フリーランス・農業・無職・学生などで、1歳未満の子を養育している親が対象です(第2号・第3号は対象外=別の仕組みがある、または元々負担がない)。
③ 免除される期間
- 実母:産前産後の免除(4〜6ヶ月)に続く9ヶ月間(合わせて最大13ヶ月ぶんが免除の対象に)
- 実父・養父母:子を養育することになった日から、1歳の誕生月の前月まで(最大12ヶ月)
④ 所得制限なし ここが大きい。事業所得がしっかりある自営業・フリーランスでも、所得に関係なく免除されます。多くの免除制度にある「収入が一定以下」の壁がありません。
⑤ 将来の年金は減らない 免除された期間は「保険料を納付したものとして」老齢基礎年金の受給額に反映されます。つまり免除されても、将来もらう年金は満額のままカウント。ここが「未納」とはまったく違う、いちばん大事なポイントです。
⑥ 申請が必要(自動ではない) これも見落とし厳禁。申請して初めて免除されます。黙っていても勝手に免除にはなりません。制度が始まったら、市区町村の窓口や年金事務所で手続きが必要です。
で、いくら得するの?
国民年金保険料は月およそ1万7千円台(年度ごとに改定)。仮に月1万7千円として計算すると、
- 12ヶ月免除されれば、およそ20万円の保険料がまるまる浮く
- しかも、その期間も将来の年金は満額のまま
さらに、夫婦そろって第1号被保険者(例:夫婦でフリーランス)なら、条件を満たせばそれぞれが対象になり得ます。世帯で見ると、育児期の負担軽減はかなり大きい。「知らずに払い続けていた」人と「申請して免除を受けた」人とで、20万円前後の差がつく——これが“申請制”の怖いところです。
フリーランスのお金まわりの守りはフリーランスのお金の基本ガイドにもまとめています。
対象になる人・ならない人(正直に整理)
対象になりやすいのは、こんな人
- 自営業・フリーランス・農業などで、自分で国民年金を払っている(第1号)
- 2026年10月以降に、1歳未満の子を育てている(実父母・養父母)
- 事業所得が多くても関係なし(所得制限がないため)
対象にならない人
- 会社員・公務員(第2号):そもそも育休中は別制度で社会保険料が免除される(出産・育児でもらえるお金の記事を参照)
- 扶養内の配偶者(第3号):もともと自分で国民年金保険料を負担していない
- 制度開始(2026年10月)より前の育児期間:さかのぼっての適用は基本的に対象外
「自分は何号被保険者なのか」が分からない人は、まずそこの確認から。ねんきん定期便や年金手帳、市区町村の国保・年金窓口で分かります。年金の基本は年金は何歳からもらうのが得かの記事でも触れています。
よくある疑問
Q. 父親も免除されますか? A. されます。実父・養父母も対象です。母親だけの制度ではありません。
Q. 収入が多いと使えませんか? A. 所得制限はありません。事業がうまくいっていて所得が高くても、育児期間であれば対象です。
Q. 免除されると、将来の年金は減りませんか? A. 減りません。免除期間は「納付済み」として満額カウントされます。ここが「未納」との決定的な違いです。
Q. 自動で免除されますか? A. いいえ、申請制です。制度が始まったら、市区町村・年金事務所で手続きを。産前産後免除(母親)は先に手続きが必要な点にも注意。
Q. すでに払った保険料は戻りますか? A. 制度上、免除対象期間にすでに納付していた分の充当・還付の仕組みも案内されています。詳しくは手続き時に窓口で確認を。
まとめ——“申請制”だから、知った人が得をする
- 2026年10月から、国民年金 第1号(自営業・フリーランス等)の子育て世帯も保険料が免除に
- 実母は産後の免除に続く9ヶ月、実父・養親は最大12ヶ月が対象
- 所得制限なし・将来の年金は満額のまま・父も対象
- ただし申請しないと免除されない。黙っていると、そのまま払い続けることになる
- 12ヶ月で約20万円、夫婦フリーランスなら世帯でさらに大きい
長らく「会社員だけズルい」と言われてきた育児期間の年金負担。ようやく自営業・フリーランスにも手当てが入ります。制度は良くなっても、知って・申請した人だけが得をするのは、いつものパターンです。
今日やる1つを挙げるなら——自分(と配偶者)が国民年金の第1号かどうかを確認する。そのうえで、これから・今まさに0歳を育てているなら、「2026年10月に免除の申請」とカレンダーにメモしておく。それだけで、20万円前後の取りこぼしを防げます。
本記事は、NISA・家計改善を実践する会社員が、公的機関の情報をもとに執筆しています。
本記事は2026年7月時点の日本年金機構の公表情報に基づいています。制度の詳細・免除期間・申請方法は変更される場合があり、個別の適用可否は市区町村・年金事務所の窓口や日本年金機構の公式案内でご確認ください。