会社を辞めるとき、意外と後回しにされがちなのが「健康保険、どうする問題」です。退職した瞬間、それまで会社で入っていた健康保険の資格はなくなります。でも日本は国民皆保険なので、何かしらの保険には入り直さないといけない。
私の周りでも、転職の合間に「気づいたら無保険の期間ができていた」「保険料の通知が来て、想像より高くて焦った」という話をちょくちょく聞きます。選択肢ごとに保険料の決まり方も手続き期限も違うので、知らずに動くと損をしたり、慌てたりします。
この記事では、退職後の健康保険の3つの選択肢を、保険料・条件・向いている人で比較します(2026年時点の制度)。
退職後の選択肢は大きく3つ
会社を辞めたあとの健康保険は、基本的に次の3択です。
- 任意継続……辞めた会社の健康保険を、最長2年間そのまま続ける
- 国民健康保険(国保)……市区町村が運営する保険に入る
- 家族の扶養に入る……配偶者や親など、家族の健康保険の被扶養者になる
どれを選ぶかで保険料が大きく変わります。順番に見ていきます。
① 任意継続——会社の保険を続ける
退職後も、それまでの健康保険(協会けんぽや健康保険組合)を最長2年間継続できる制度です。
- 条件:退職日までに継続して2か月以上その健康保険に入っていたこと
- 手続き期限:退職日の翌日から20日以内(※これを過ぎると原則入れません。最大の落とし穴)
- 保険料:在職中は会社が半分払ってくれていましたが、任意継続では会社負担分も自分で払うため、原則として保険料は約2倍になります
ただし、上限があります。協会けんぽの場合、保険料の計算に使う標準報酬月額には上限が設けられていて、給料が高かった人ほど「2倍」より割安に感じられます。具体的には、退職時の標準報酬月額と、全被保険者の平均(協会けんぽで月30万円)の低いほうで計算されます。
ざっくりの目安として、協会けんぽ(保険料率は都道府県で多少違い、おおむね10%前後)で上限に当たる人なら、保険料は介護保険のない世代で月3万円弱、介護保険のかかる40〜64歳で月3万円台半ばといったイメージです(健康保険組合は独自料率なので別途確認を)。
② 国民健康保険——自治体の保険に入る
会社の保険を継続せず、市区町村の国民健康保険に入る選択肢です。
- 手続き期限:退職日の翌日から14日以内が原則(市区町村の窓口で手続き)
- 保険料:前年の所得をもとに計算され、お住まいの自治体によって金額がかなり違うのが特徴。上限(年間の最高額)も設けられています
- 軽減制度:所得が低い場合や、会社都合の退職(倒産・解雇など)の場合は、保険料が軽減される制度があります
ここで重要なのが、国保は「前年所得ベース」だという点。退職した年の翌年度は、まだ給料が高かった前年の所得で計算されるため、想像より高くなりがちです。逆に、収入の少ない状態が続けば翌年度から下がります。
会社都合での退職の場合は「非自発的失業者の軽減」が使えることがあり、前年給与所得を大幅に減らして計算してもらえます。該当しそうな人は、必ず市区町村の窓口で確認してください。これを知らずに通常計算のまま払い続けると、かなりの差になります。
③ 家族の扶養に入る——条件が合えば最強
配偶者や親など、家族が会社の健康保険に入っている場合、その被扶養者になる選択肢です。
- 保険料:自己負担はゼロ。扶養に入っても、扶養する側の保険料は基本的に増えません
- 条件:被扶養者の年収見込みが原則130万円未満(60歳以上や障害がある場合は180万円未満)など。失業給付を受けている間は、その日額によっては扶養に入れないこともあります
保険料がかからないので、条件さえ合えばこれが圧倒的に有利です。退職して当面の収入が少ない見込みなら、まず「家族の扶養に入れないか」を確認するのが鉄則。ただし、失業保険(基本手当)を受給する場合は、その金額によって扶養の可否が変わるので、家族の勤務先の健康保険に確認しましょう。
どれが得か——判断の流れ
3つを比べる順番は、だいたいこうなります。
| 選択肢 | 保険料の決まり方 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 家族の扶養 | 自己負担ゼロ | 退職後の収入が少なく、家族の保険に入れる人 |
| 任意継続 | 退職時の標準報酬月額ベース(上限あり) | 前年の所得が高く、給料も高かった人 |
| 国民健康保険 | 前年所得ベース(自治体差・軽減あり) | 前年所得が低い人、会社都合退職で軽減が使える人 |
判断の手順としては、次の順で考えると迷いません。
- まず「家族の扶養に入れるか」を確認(入れるなら保険料ゼロでこれが最有力)
- 扶養に入れないなら、任意継続と国保の保険料を両方試算して比べる
- 会社都合の退職なら、国保の軽減が使えるか必ず確認
任意継続と国保は「どっちが得」が人によって逆転します。前年の所得が高かった人は任意継続(上限のおかげで割安になりやすい)、前年の所得が低かった人や軽減が使える人は国保が有利、という傾向です。両方の見積もりを出してから決めるのが、いちばん確実です。
具体例で比べてみる(年収500万円で退職した場合)
イメージをつかむために、前年の年収が500万円だった人が退職したケースで、任意継続と国保をざっくり比べてみます(概算・自治体や健保で変動します)。
- 任意継続:協会けんぽの上限(標準報酬月額30万円)で計算されることが多く、保険料率おおむね10%として、介護保険のない世代で月3万円弱。会社負担分も自分で払うものの、上限のおかげで「在職時のちょうど2倍」より抑えられるケースが多い。
- 国民健康保険:前年所得500万円ベースで計算されるため、自治体によっては月3〜4万円台になることもある。退職翌年度はまだ前年の高い所得で計算される点に注意。
- 家族の扶養:条件を満たせば0円。
この例だと「前年所得が高い人は、上限のある任意継続のほうが割安になりやすい」という傾向が見えます。一方、退職して収入が大きく下がる2年目以降は、前年所得が下がって国保が安くなる、という逆転も起こります。だからこそ「1年目は任意継続、2年目は国保」という乗り換えも選択肢になります。毎年、両方を試算して見直すのが賢い使い方です。
なお、保険料の試算は、任意継続なら加入していた健康保険(協会けんぽ・健保組合)、国保なら市区町村の窓口で出してもらえます。どちらも「見積もりを出してください」と言えば教えてくれるので、感覚で決めず、必ず数字で比べましょう。
手続きの期限に注意(ここで失敗する人が多い)
健康保険の切り替えは、期限がシビアです。
- 任意継続:退職日の翌日から20日以内。1日でも過ぎると原則入れない
- 国民健康保険:退職日の翌日から14日以内が原則
- 家族の扶養:家族の勤務先を通じて手続き。必要書類(退職証明や離職票など)を早めに準備
特に任意継続の「20日以内」は、退職のバタバタで見落としやすい。**「辞めると決めたら、退職前から健康保険の段取りを始める」**くらいでちょうどいいです。
なお、任意継続を選んだあとでも、保険料を期限までに納めないと資格を失う仕組みになっています。「国保のほうが安いと後で気づいて、わざと納付せずに切り替える」という裏ワザ的な使い方もありますが、無保険期間ができないよう、切り替えのタイミングは慎重に。
よくある質問(FAQ)
Q. 一番安い方法はどれ?
A. 条件が合うなら**家族の扶養(保険料ゼロ)**が最も安いです。扶養に入れない場合は、前年所得が高い人は任意継続、低い人や会社都合退職の人は国保が有利になりやすい。最終的には両方を試算して比べましょう。
Q. 任意継続と国保、途中で変えられる?
A. 任意継続は最長2年で、以前は自分の都合での途中脱退ができませんでしたが、現在は申し出による脱退も可能です。国保への切り替えを考えている場合は、保険料の納付状況とタイミングに注意してください。
Q. 退職してすぐ転職する場合は?
A. 転職先にすぐ入社するなら、転職先の健康保険にそのまま加入できるので、空白期間がなければ手続きは基本的に不要です。問題になるのは「辞めてから次の入社までに空白がある」ケースです。
Q. 保険証はいつ返す?いつ使えなくなる?
A. 退職日の翌日から、それまでの保険証は使えません。退職後に使うと、後で医療費の精算を求められます。新しい保険の資格ができるまでの間に通院する場合は、切り替え手続きを急ぎましょう。
Q. 国民年金の切り替えも必要?
A. 必要です。会社員のときは厚生年金(と健康保険)にセットで入っていますが、退職して扶養にも入らない場合は、国民年金(第1号被保険者)への切り替えも同時に必要になります。健康保険の手続きで市区町村の窓口に行く際、年金の切り替えもまとめて済ませてしまうのが効率的です。配偶者の扶養に入る場合は、年金も第3号被保険者になれることがあるので、あわせて確認しましょう。
まとめ
退職後の健康保険のポイントを整理します。
- 選択肢は「任意継続・国民健康保険・家族の扶養」の3つ
- まず家族の扶養に入れるかを確認(入れれば保険料ゼロ)
- 入れないなら、任意継続と国保の保険料を両方試算して比較
- 任意継続は20日以内、国保は14日以内と期限が厳しい
- 会社都合の退職なら国保の軽減を必ず確認
退職・転職は、ただでさえやることが多くて健康保険まで気が回りにくい場面です。でも、ここを押さえておくだけで、無保険のリスクも、払いすぎも防げます。「辞める」と決めたら、早めに保険の段取りも始めておきましょう。
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本記事は、NISA・家計改善を実践する会社員が、自身の経験と公的機関の情報をもとに執筆しています。
本記事は2026年時点の制度に基づいています。健康保険の保険料・条件・軽減制度は、加入する健康保険・お住まいの自治体・年度によって異なります。最新かつ正確な情報は、ご加入の健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)、お住まいの市区町村、および全国健康保険協会の公式情報をご確認ください。