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定年退職後のお金の管理——退職金・年金・支出の整理を60歳手前でやった話

父が59歳のとき、「来年定年なんだけど、お金のことが全然わからない」と相談してきました。

正直、私も詳しくなかった。でも一緒に調べて整理してみたら、「知らないと損をしていた部分」がいくつも出てきました。

定年退職前後のお金の整理は、「やるか・やらないか」で老後の生活水準が大きく変わります。父と一緒に取り組んだ内容を書きます。


退職金の受け取り方で税金が変わる

父が最初に驚いたのは「退職金の受け取り方によって税金が変わる」という事実でした。

退職金の受け取り方には主に2パターンあります。

①一時金(一括受取):退職所得として課税

退職所得には「退職所得控除」が適用されます。

退職所得控除の計算式(勤続20年超の場合):

800万円 + 70万円 × (勤続年数 - 20年)

父の場合:勤続38年 800万円 + 70万円 × 18年 = 800万円 + 1,260万円 = 2,060万円の控除

退職金が2,060万円以下なら、一時金受取の税負担はほぼゼロになります。

父の退職金は約1,800万円。控除内に収まるため、一時金受取が圧倒的に有利でした。

②年金形式(分割受取):雑所得として課税

毎年一定額を受け取り、「公的年金等控除」が適用されます。ただし年金形式だと退職所得控除が使えないため、退職金の総額が大きい場合は不利になることが多い。


年金の受給開始年齢を「繰り下げ」するか検討する

父は65歳が年金の標準受給開始年齢でした。

「繰り下げ受給(受給開始を遅らせる)」という選択肢があります。

繰り下げ受給のルール(2026年現在):

父のケース:標準受給額月18万円の場合

受給開始月額年額
65歳180,000円216万円
70歳255,600円(42%増)306.7万円
75歳331,200円(84%増)397.4万円

損益分岐点の計算: 65歳から受け取り始めた場合と比べて、70歳から受け取る場合は5年間分の年金(約1,080万円)を受け取らない代わりに、その後毎月75,600円多くもらえます。

1,080万円 ÷ 75,600円/月 ≒ 143ヶ月(約12年)

つまり82歳以降まで生きれば70歳からの方がトータルで得になる計算です。

父は健康状態が良く、長寿家系でもあるため、70歳まで繰り下げる選択をしました。


退職後の「支出の変化」を整理する

退職後は収入が減る一方、意外と支出が増える部分もあります。

退職後に増える支出:

項目内容
健康保険料会社員の時は会社が半分負担→全額自己負担になる(任意継続か国民健康保険への加入)
年金保険料厚生年金→国民年金(第1号被保険者になる場合)
医療費加齢とともに増加傾向
趣味・旅行時間が増えるとお金の使い方も変わる

退職後に減る支出:

項目内容
通勤交通費定期代・ガソリン代
外食・昼食代弁当持参・家食が増える
スーツ・被服費仕事着が不要に
交際費(会社関係)職場の飲み会等がなくなる

父の場合、退職後に「健康保険料」が一番の誤算でした。

在職中は会社が保険料の半分を負担していたため、月の手取りから引かれる保険料は約18,000円でした。退職後に国民健康保険に加入すると、退職前年の収入をもとに計算されるため、退職翌年は月約35,000円(年間約42万円)の保険料になりました。

「会社を辞めた翌年は健康保険料が高くなる」ことを知らなかったため、退職直後の家計で慌てた、と父は言っていました。


退職後の健康保険の選択肢

退職後の健康保険は3つの選択肢があります。

①任意継続(退職後2年間、在職中の保険を継続)

退職前の保険料の2倍(会社負担分も自分で払う)になりますが、保険料に上限があります。収入が高かった人は在職中の保険料 × 2倍が、国民健康保険より安くなることがあります。

②国民健康保険

前年の所得に基づいて計算。退職直後(前年の会社員収入が高い)は高くなりがち。翌年以降は収入が減るにつれて保険料も下がる。

③家族の扶養に入る

配偶者や子どもが勤務先の社会保険に加入している場合、被扶養者になれる条件(年収130万円未満など)を満たせば、保険料ゼロで加入できます。

父の場合:任意継続(2年間)→ 国民健康保険(3年目以降)の順が最安でした。実際に計算すると2年間で約10万円の節約になりました。


退職金の置き場所

父の退職金1,800万円をどう管理するかも、一緒に考えました。

「全部定期預金」という選択も安心ですが、老後20〜30年を見据えると運用も考えたほうがいい。

我が家の整理方針:

割合金額置き場所目的
30%540万円普通預金・高金利口座生活防衛資金(3年分)
30%540万円定期預金(1〜3年)近い将来の出費(旅行・車・医療)
40%720万円NISA(全世界株式)長期運用・インフレ対策

60歳からNISAを始めても、10〜15年の運用期間があります。年利4〜5%で15年運用すると、720万円が約1,400万円になる計算(※投資はリスクを伴います)。

「退職金は全部使わない・全部守る」ではなく「守る部分と増やす部分を分ける」という発想が重要です。


「老後2,000万円問題」への実際の対応

2019年に話題になった「老後2,000万円問題」。実際に父に当てはめて計算しました。

父の条件:

毎月2.5万円の不足を30年(70歳〜100歳)補うために必要な額: 2.5万円 × 12ヶ月 × 30年 = 900万円

退職金1,800万円のうち900万円を老後の不足補填に充てて、残りの900万円で生活費の変動・医療費・突発支出に備える計算になりました。

「2,000万円必要かどうか」は個人の収支によって全然違います。自分の年金額・生活費・退職金を実際に計算することが先です。


定年前にやっておくこと

父と一緒に整理して、「これは早めにやっておけばよかった」というポイントがいくつかありました。

60歳前にやっておくべきこと:

  1. ねんきん定期便・ねんきんネットで年金見込み額を確認する(毎年誕生月に届く書類)

  2. 退職金の額と受け取り方を人事部に確認する(計算方法・一時金vs年金の選択肢)

  3. 健康保険の切り替え計算をしておく(任意継続 vs 国民健康保険、どちらが安いか)

  4. 65歳以降の月々の収支を試算する(年金額 - 生活費 = 不足額)

  5. 退職後の「暇つぶし費用」を見積もる(趣味・旅行・外食が増えることを現実的に考える)

特に年金の見込み額確認は、「ねんきんネット」(日本年金機構の公式サービス)でアカウントを作れば、いつでも自分の見込み額が確認できます。


お金の準備だけでなく「使い方」も考える

父と話していて一番印象的だったのは、「老後のお金は守ることばかり考えていた」という言葉でした。

定年後に趣味・旅行・家族との時間にお金を使うことも、老後の豊かさには不可欠です。

「使いすぎないようにしよう」「節約しよう」という気持ちは理解できますが、健康で動ける60〜70代にやりたいことをやらないのは、また別の後悔につながります。

守る部分をしっかり確保した上で、「使う部分」の予算も計画的に持つ。これが老後のお金管理の理想です。

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本記事はFP(ファイナンシャルプランナー)の知識をもとに執筆しています。

本記事は2026年時点の制度・税制に基づいています。年金制度・退職所得控除・健康保険料の計算方法は変更される場合があります。最新情報は日本年金機構国税庁の公式サイトをご確認ください。


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