この記事で分かるのは、「分電盤の点検に伺います」という電話が本物かどうかを、その場で見分ける方法です。
先に結論を書いておきます。
本物の法定点検で、点検した人がそのまま分電盤の交換工事を勧めてくることはありません。
これは僕の意見ではなく、国民生活センターが2026年9月16日の注意喚起ではっきり書いている一文です。
この一線さえ覚えておけば、手口の細かいバリエーションを暗記する必要はありません。
1年で5倍。数字がちょっと異常です
国民生活センターが全国の消費生活センターから集めた相談件数を見ると、増え方が普通ではありません。
| 年度 | 分電盤の点検商法の相談件数 |
|---|---|
| 2022年度 | 14件 |
| 2023年度 | 39件 |
| 2024年度 | 1,290件 |
| 2025年度 | 6,545件 |
| 2026年度(7月31日まで) | 2,223件 |
2022年度には、1年でたった14件でした。
それが2025年度には6,545件。1日あたりにすると、毎日およそ18件の相談が全国のどこかで入っている計算です。
しかも2026年度は4か月で2,223件。前年の同じ時期は1,312件だったので、勢いはまだ1.7倍ほどに伸びています。落ち着いてきた、という話ではありません。
もう一つ気になったのが、地域の広がりです。
2024年度は埼玉・千葉・東京・神奈川の南関東に集中していました。それが2025年度には、北関東や九州北部を含めて各地で急増しています。
「首都圏の話でしょ」と思っていた人の地域にも、もう来ていると考えたほうがいいと思います。
狙われているのは、ほぼ高齢の親世代
2025年度の相談を年代別に見ると、こうなっています。
| 年代 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 60歳未満 | 472件 | 7.8% |
| 60歳代 | 665件 | 11.0% |
| 70歳代 | 1,722件 | 28.5% |
| 80歳代 | 2,609件 | 43.2% |
| 90歳以上 | 571件 | 9.5% |
70歳以上を足すと81.2%。いちばん多いのは80歳代で、4割を超えています。
つまりこの記事を読んでいる現役世代の人にとっては、「自分が引っかかる話」というより、**「実家の親が引っかかる話」**です。
1件あたり平均18万円。財布にとってはどのくらいか
契約させられた金額も、国民生活センターが集計しています(2025年度、金額が分かる3,250件)。
- 10万円未満:9.8%
- 10万円以上15万円未満:23.3%
- 15万円以上20万円未満:46.6%
- 20万円以上:20.3%
平均は約18万円です。
18万円というと、月1万5,000円ずつ積み立てて、ちょうど1年分。
年金暮らしの親にとっては、1年かけて少しずつ残してきたお金が、玄関先の30分で消える金額だと思います。
しかも「分電盤が古い」と言われると、断りにくい。電気が止まったら困るし、火事と言われたら怖い。
分かっていても、その場では「じゃあお願いします」と言ってしまう。
僕は、これを「親が不注意だから」とは思いません。不安をあおられた状態で、目の前の人から「今すぐ」と言われたら、若くても判断はぶれます。
実際の手口は、こんな流れです
国民生活センターが紹介している相談事例を、要点だけ並べます。
事例1(80歳代男性) 大手電力会社を名乗る業者が「無料点検」に来訪。分電盤を見て「古いので交換が必要」と言われ、約20万円で契約。あとで思い出すと、1か月前に本物の法定点検を受けていて「異常なし」と言われていた。
事例2(70歳代女性) 「市役所から依頼されてブレーカーの点検に行く」と電話。訪問後「機器が古く、ホコリもたまっていて危ない。使用期限がある」と言われ、約12万円で契約。近所の電気工事店に話すと、聞いたことのない業者だった。
事例3(70歳代女性) 「電力会社のものですが分電盤の点検に伺います」と電話。法定点検だと思って承諾したら「分電盤の耐用年数は法律で15年と決まっている。漏電したら大変なことになる」と言われ、約14万円で契約。電力会社に確認したら、関係のない業者だった。
事例4(90歳代男性) 一人暮らしの父親が点検の電話を受けて承諾。後日の訪問で交換を勧められ、約20万円を現金で支払った。見積書も契約書も受け取っていない。
4件に共通しているのは、**名乗る相手が「電力会社」「市役所」**だということです。
誰でも「公的な点検かな」と思ってしまう名前を使っています。
本物の法定点検と、点検商法の違い
ここがこの記事でいちばん大事なところです。
電気事業法にもとづく一般家庭の電気の点検は、本当にあります。4年に1回、無料で行われます。
来るのは、電力会社(正確には東京電力パワーグリッドや関西電力送配電のような一般送配電事業者)か、そこから委託を受けた国の登録調査機関の調査員です。
違いを表にまとめます。
| 本物の法定点検 | 点検商法 | |
|---|---|---|
| 最初の連絡 | 原則、書面で案内。電話で日時を知らせることは原則ない | いきなり電話が来る |
| 費用 | 無料 | 点検は無料をうたう。本題はそのあと |
| 名乗り方 | 身分証明書を携帯した調査員 | 「電力会社のもの」「市役所から依頼」 |
| 点検のあと | 交換工事の契約は持ち掛けない | 「古い」「危ない」「法律で15年」と交換を迫る |
そして、業者がよく使う「分電盤の耐用年数は法律で15年と決まっている」という言葉。
国民生活センターの資料には、**「住宅用分電盤の使用期限を定めた法律はありません」**と書かれています。
この一言は、そのまま親に伝えていいと思います。
その場で断るための、3つの一線
手口は今後も名乗り方を変えてくるはずです。だから、手口ではなく「一線」で覚えるほうが確実です。
一線①:電話で点検を持ち掛けられたら、日程を決めない
「確認してから折り返します」で電話を切ります。
確認先は、業者が言った番号ではなく、電気料金の明細や検針票に載っている電力会社の番号です。
一線②:点検した人と、その場で契約しない
本物の点検なら、そもそも契約の話は出ません。契約の話が出た時点で、相手が本物ではない可能性が高いということです。
本当に分電盤が古くて気になるなら、あとから地域の電気工事店に相談すればいい。分電盤の交換は電気工事士の資格が要る工事なので、信用できる店に頼むのがいちばん安心です。
一線③:交換するなら、見積もりは2社以上
僕は仕事で資材の発注をしてきましたが、1社だけの見積もりで決めることはまずありません。比べる相手がいないと、その金額が高いのか安いのか、判断のしようがないからです。
18万円の工事を、玄関先で1社だけの言い値で決める。発注の感覚からすると、ちょっと考えにくい買い方です。
もう契約してしまった場合
あきらめる前に、確認してほしいことがあります。
クーリング・オフは「書面を受け取った日から8日以内」
業者のほうから電話をかけてアポイントを取り、自宅に来て契約した場合は、特定商取引法の「訪問販売」にあたると考えられます。
その場合、契約書面を受け取った日から8日以内なら、クーリング・オフで契約をなかったことにできます。通知は書面か、メールなどの電磁的な方法で行います。
8日を過ぎていても、取り消せることがある
「法律で15年と決まっている」のように、契約の大事な部分で事実と違うことを言われて信じてしまった場合は、誤認に気づいてから1年、または契約から5年のあいだ、取り消しができる場合があります。
事例4のように契約書をもらっていないケースも、自己判断で終わらせないでください。
迷ったら、まず「188」
消費者ホットライン「188(いやや)」に電話すると、地域の消費生活センターにつないでもらえます。
ここは本人でなくても大丈夫です。家族や、ホームヘルパー、地域包括支援センターの人からでも相談できます。
ちなみに国民生活センターの集計では、相談の時点ですでにお金を払っていたのは2025年度で3.8%でした。
裏を返すと、相談した人のほとんどは、払う前に間に合っているということです。おかしいと思った時点で188に電話するのが、いちばん効くと思います。
実家の親に、今日伝えておきたいこと
細かい手口を全部覚えてもらうのは、正直むずかしいと思います。
僕なら、次の2つだけを伝えます。
- 「電力会社の点検で、電話がかかってくることは基本ない」
- 「点検した人に、その場で工事を頼まない。まずこっちに電話して」
これだけなら、電話を置いた直後でも思い出せます。
あわせて、実家の電気の契約先がどこの電力会社か、問い合わせ番号はどこに書いてあるかを、帰省したときに一緒に確認しておくと安心です。電話が来たときに「どこへ確かめればいいか」で迷わずに済みます。
国民生活センターの事例1では、本物の法定点検を受けた1か月後に、偽の業者が来ています。本物の点検を受けたばかりの家でも、安心はできないということです。
この記事が不要な人
自分も家族も、すでに「知らない業者の点検は受けない」と決めている人には、目新しい話ではないと思います。
また、分電盤そのものが本当に古くて交換を考えている人は、この記事で業者を避けすぎる必要はありません。地域の電気工事店に自分から相談して、複数の見積もりを取れば、それはごく普通の設備の更新です。
気をつけたいのは、向こうから来た話で、その場で決めること。それだけです。
本記事は、家計改善を実践する会社員が、自身の経験と公的機関の情報をもとに執筆しています。相談件数・事例・アドバイスは国民生活センター「分電盤の点検商法にご注意ください」(2026年9月16日公表)によるものです。クーリング・オフや取り消しが使えるかは契約の状況によって変わるため、個別のケースは消費生活センター(188)にご相談ください。
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