「不動産投資で月10万円の家賃収入がある」と先輩から聞いて、目を輝かせた。当時の私は貯金ゼロ、月末になるたびに残高が数百円になる生活だった。先輩の「利回り6%」という言葉を信じて契約寸前まで進んだが、実際の手取りは想定の半分以下だと後から判明した。計算を自分でやっていれば気づけた。表面利回りと実質利回りの差を知らないまま投資した場合、3,000万円の物件で年間89万円——20年間で1,780万円を「計算ミス」で失うことになる。
表面利回りの落とし穴——広告の数字を鵜呑みにしてはいけない
表面利回りとは「年間家賃収入 ÷ 購入価格 × 100」で計算した数字だ。3,000万円の物件から年間150万円の家賃収入があれば、表面利回りは5%になる。シンプルでわかりやすいので、不動産業者の広告によく使われる。
ただしこの数字には管理費・税金・修繕費・空室期間が一切含まれていない。最もよい条件だけを見せている数字だ。広告で「利回り5%」と書いてあっても、実際に手元に残るお金はもっと少ない。
「家賃収入が月10万円あっても、諸々引いたら手残りはいくら?」という問いを立てられるかどうかが、損をする人としない人の分かれ目だ。
「でも不動産業者が提示する数字だから信頼できるのでは…」——不動産業者は物件を売ることが仕事だ。表面利回りを使うのは違法ではないが、実質的なコストを隠せる数字でもある。自分で計算しない限り、本当の収益性は見えてこない。
実質利回りの計算方法——本当の収益性を見極める
実質利回りの計算式は「(年間家賃収入 − 年間経費)÷ 購入価格 × 100」だ。先ほどの例で計算してみる。
年間経費の内訳:
- 管理費:月2万円(年24万円)
- 固定資産税・都市計画税:年15万円
- 火災保険料:年5万円
- 修繕積立金:年20万円
- 空室による家賃損失(想定):年15万円
- その他経費:年10万円
- 合計:年89万円
年間手取り家賃は150万円 − 89万円 = 61万円。実質利回りは61万円 ÷ 3,000万円 × 100 で**約2.0%**だ。広告の「5%」がいつの間にか半分以下になった。
この差は珍しくない。新築物件や高価格帯の物件ほど、表面利回りと実質利回りの乖離が大きくなる傾向がある。投資判断をするなら、必ず自分で実質利回りを計算する。
「でも空室が出ないような人気物件を選べばいいのでは…」——空室ゼロを何年も続けられる物件は存在しない。入居者の退去、建物の老朽化、周辺環境の変化は必ず起きる。空室率5〜10%を最初から織り込んで計算することが現実的な判断だ。「空室がなければ大丈夫」は計算ではなく、希望だ。
REITの利回りも同じ視点で比較する
直接の不動産投資が難しい場合、REIT(不動産投資信託)も有力な選択肢だ。証券口座から株のように売買でき、数万円から始められる。
REITの利回りは「年間分配金 ÷ 現在の基準価額 × 100」で計算する。基準価額12,000円のREITから年間400円の分配金が出ていれば、利回りは約3.3%だ。
ただしREITにも注意点がある。
- 購入時の販売手数料(1〜2%程度)が初期コストとしてかかる
- 信託報酬(年0.5〜1.0%程度)が毎年差し引かれる
- 複数の銘柄を比較して実質利回りを計算することが大切だ
表示されている利回りから0.5〜2%を引いた数字が、実質的なリターンに近い。数字の見た目に惑わされず、自分で計算する習慣が、長期の資産形成を守る。
今日できる最小アクション
気になる不動産投資物件またはREIT銘柄を1つ選び、表面利回りと実質利回りを自分で計算してみる。 計算式は「(年間家賃収入 − 年間経費)÷ 購入価格 × 100」だ。経費の内訳がわからなければ、管理費・固定資産税・修繕費・空室損失をそれぞれ仮置きして計算する練習だけでいい。
新NISAを始めるなら: 手数料ゼロ・クレカ積立でポイント還元が高いSBI証券または楽天証券がおすすめです。