「家賃を払い続けるのは勿体ない。どうせ払うなら自分のものになる持ち家の方がいい」
この言葉、一度は聞いたことがあると思います。
親世代が持ち家を勧める最大の理由がこれです。
でも「生涯コスト」で本当に持ち家の方が安いか、実際に計算してみました。
結論は「どちらが得かは条件次第」。でも「条件次第」の中身を知っておくことで、自分がどちらを選ぶべきかが見えてきます。
前提:計算の条件
比較のために、二つのケースを設定しました。
Aさん(持ち家を購入)
- 購入価格:4,000万円(新築マンション・都市近郊)
- 頭金:500万円
- ローン:3,500万円・35年・変動金利0.7%(2026年時点)
- 月々の返済:約96,000円
- 管理費・修繕積立金:月25,000円
- 固定資産税:年間12万円(月換算10,000円)
Bさん(賃貸に住み続ける)
- 家賃:85,000円(同等エリア・同等広さの賃貸)
- 更新料:2年ごとに1ヶ月分(月換算3,500円)
35年間のコスト比較
持ち家(Aさん)の35年間の総支払額
| 費用 | 月額 | 35年間の合計 |
|---|---|---|
| ローン返済 | 96,000円 | 40,320,000円 |
| 管理費・修繕積立金 | 25,000円 | 10,500,000円 |
| 固定資産税 | 10,000円 | 4,200,000円 |
| 大規模修繕・設備交換 | ※10〜15年ごと | 約3,000,000円 |
| 頭金(初期費用) | — | 5,000,000円 |
| 合計 | 約63,020,000円 |
さらに35年後、物件の価値がゼロになった場合(中古マンションの価値はほぼゼロ)には、このコストがそのまま住居費の合計になります。
賃貸(Bさん)の35年間の総支払額
| 費用 | 月額 | 35年間の合計 |
|---|---|---|
| 家賃 | 85,000円 | 35,700,000円 |
| 更新料等 | 3,500円 | 1,470,000円 |
| 合計 | 約37,170,000円 |
差額:持ち家 6,302万円 - 賃貸 3,717万円 = 約2,585万円
この計算だけ見ると「賃貸の方が2,585万円安い」という結論になります。
でも、持ち家派が「それは違う」と言う理由
この単純計算に対して、持ち家派からは「それはフェアな比較じゃない」という反論があります。
反論①:35年後に資産として物件が残る
住宅ローンを完済すれば、物件が手元に残ります。中古マンションでも数百万〜数千万円の価値がある場合も。
「使い続けるか・売るか・子どもに残す」という選択肢ができる。
反論②:老後に家賃がかからなくなる
持ち家を持てば、定年後の家賃ゼロという安心感がある。
年金が月15万円しかない状態で家賃8〜9万円を払い続けるのはリスクが高い。
反論③:住宅ローン控除がある
住宅ローン残高の0.7%が13年間税額控除になります。残高3,500万円なら年間24.5万円 × 13年 = 318万円以上の控除。
賃貸派が「それも違う」と言う理由
持ち家派の反論に対して、賃貸派はこう言います。
反論①:物件価値はほぼゼロになる
新築マンションの多くは、35年後に築35年の「中古マンション」になります。立地・管理状況によって価値は異なりますが、大幅に下落するケースが多い。
資産として残るという期待は、場所・物件によって大きく違います。
反論②:差額を投資に回せば老後資金は作れる
持ち家のコストが月131,000円(96,000 + 25,000 + 10,000円)に対して、賃貸が88,500円(85,000 + 3,500)なら、差額42,500円/月を35年間投資できます。
42,500円 × 12ヶ月 × 35年 = 元本17,850,000円
年利5%で35年運用すると:約38,500,000円
「持ち家の資産価値 vs 賃貸での投資資産3,850万円」という比較になります。
反論③:賃貸は引っ越し・状況変化に対応できる
転勤・転職・家族構成の変化に合わせて住む場所を変えられる。ローンを組んでいると、この柔軟性が失われます。
どちらが「得」かの答え
「賃貸vs持ち家」の正解は、以下の変数によって変わります。
持ち家が有利な条件:
- 立地が良く、物件価値が下がりにくい(都心・駅近)
- 長期間(30年以上)同じ場所に住む予定がある
- 低金利でローンを組める
- 老後の家賃リスクを避けたい
賃貸が有利な条件:
- 転勤・転職の可能性がある
- 物件価値が下がりやすいエリア
- 差額を投資に回す規律がある
- 金利上昇リスクを取りたくない
「どちらが正解か」より「どちらが自分に合っているか」
経済的な損得だけで考えると、条件次第でどちらも「正解」になりえます。
大事なのは:
- ライフスタイルの柔軟性:転勤・転職・家族構成の変化がどれくらい予想されるか
- 金利リスクへの許容度:変動金利の上昇局面でも返済できるか
- 頭金・諸費用を準備できているか:購入時に最低でも7〜8%の諸費用が必要
- 老後の住居コストをどう考えるか:年金だけで家賃を払い続けられるか
「みんなが買っているから」「親に勧められたから」という理由だけで持ち家を買うのも、「賃貸の方が合理的」という記事を読んだだけで持ち家を否定するのも、どちらも危うい。
自分の状況を正確に把握した上で選ぶことが大切です。
2026年の住宅市場の状況
参考として、2026年時点の状況を整理します。
金利動向: 日本の政策金利が上昇傾向にあり、変動金利型の住宅ローンも2024〜2025年に引き上げられています。
変動金利が0.3〜0.5%台だったものが、0.7〜1.5%程度まで上昇しているケースも出ています。
この環境では「変動金利で借り続けられるか」という不確実性が増しています。
物件価格: 都心・主要都市の物件価格は2024〜2025年も高水準が続いています。2020年以降の価格上昇で、「手が届きにくい」エリアが増えています。
友人が2年前にマンションを購入した話を書いた別の記事と合わせて読むと、「数字では分からない部分」も見えてくると思います。
マネーフォワード ME
住宅ローンの残高と毎月の返済額を、生活費・投資と合わせて管理できます。「持ち家購入後の家計に余裕があるか」を確認するためにも、支出の全体像を把握しておきましょう。