正しい保険の入り方には「順序」があります。その順序を守れば、月の保険料は5,000円以内に収まります。
保険の本質:「自分では払えないリスク」のためにある
保険の役割を一言で言うと、「自分の貯蓄では対処できない、大きな金銭的リスクに備えるもの」です。
小さなリスク(入院費10〜20万円など)は貯金で対応できます。わざわざ保険に入る必要はありません。
保険が本当に必要なのは「自分の貯金では絶対に払えない、もしくは家族が路頭に迷うレベルの経済的損失」が発生する場合だけです。
この原則を押さえれば、どんな保険が必要でどんな保険が不要かが自然と整理されます。
保険を考える前に:会社員の公的保障を把握する
「公的保障でどこまでカバーされるか」を理解せずに民間保険に入ると、ほぼ確実に二重払いになります。
会社員が持っている公的保障
| リスク | 制度 | 内容 |
|---|---|---|
| 病気・怪我で高額の医療費 | 高額療養費制度 | 月の自己負担に上限。年収370万円以下なら月約57,600円が上限 |
| 病気・怪我で長期休職 | 傷病手当金 | 給与の約2/3を最長1年6ヶ月支給 |
| 死亡(遺族がいる場合) | 遺族年金 | 妻+子に年金が支給 |
| 障害が残った場合 | 障害年金 | 障害等級に応じて年金が支給 |
| 老後の収入 | 厚生年金 | 国民年金より多い年金が受け取れる |
高額療養費制度の具体的な数字
| 年収 | 月の自己負担上限(目安) |
|---|---|
| 〜370万円 | 約57,600円 |
| 370〜770万円 | 約80,100円+α |
| 770万円超 | 約167,400円+α |
どんな大手術・長期入院をしても、月の自己負担はこの金額が上限です。
緊急予備費(生活費3〜6ヶ月分 = 100〜200万円)を貯蓄として確保していれば、入院費用は保険なしでも十分対応できます。
「入院1日あたり1万円補償の医療保険」に月3,000円払い続けることと比べると、保険料を貯金に回す方が合理的です。
正しい保険の入り方:3ステップ
ステップ1:将来のリスクを書き出す
「自分が将来直面する可能性のある、大きな出費(リスク)」をリストアップします。
例として考えるべきリスク:
- 自分が死んだ場合、家族の生活はどうなるか
- 重い病気(がんなど)になった場合、治療費・収入減はいくらか
- 働けなくなった場合、生活費はどうなるか
ステップ2:公的保障でカバーできる部分を除く
書き出したリスクのうち、社会保険でカバーされる部分を引きます。
- 入院費 → 高額療養費制度でほぼカバー
- 長期休職 → 傷病手当金で1年6ヶ月はカバー
- 死亡 → 遺族年金でいくらかカバー(不足分は計算が必要)
ステップ3:不足分だけを掛け捨て保険で補う
公的保障で足りない部分を、掛け捨て保険だけで補います。
貯蓄型・積立型保険は選びません(理由は後述)。
本当に必要な保険はこの2つだけ
①定期死亡保険(子どもがいる場合のみ)
自分が死んだ場合に、子どもが自立するまでの生活費・教育費が不足するリスクがある人が入るべき保険です。
必要な保障額の計算:
必要な生活費(年間)× 扶養期間
− 遺族年金の受給額
− 現在の貯蓄
= 民間保険で補う金額
例:妻・子1人・年間生活費240万円・扶養期間20年の場合
- 必要額:240万円 × 20年 = 4,800万円
- 遺族年金(目安):約120万円 × 20年 = 2,400万円
- 貯蓄:300万円
- 必要保障額 = 4,800万円 − 2,400万円 − 300万円 = 2,100万円
この2,100万円分の定期死亡保険(保険期間20年・掛け捨て)を探します。 30代男性なら月1,500〜2,500円程度で加入できます。
独身・子なしの場合は死亡保険は不要です。 自分が死んでも経済的に困る人がいないからです。
②がん保険(シンプルな掛け捨て型のみ)
がんは治療が長期化しやすく、高額療養費制度の上限額を毎月支払い続けるリスクがあります。3年間治療が続けば、累計自己負担は200〜300万円に達することもあります。
月1,000〜2,000円程度のシンプルな診断一時金型がん保険(掛け捨て)は、コストパフォーマンスが高い保険のひとつです。
ただし、200万円以上の緊急予備費がすでにある人は、保険なしでも対応できる場合があります。
貯蓄型保険を選ばない理由
「保険料を払い続けると満期に返戻金がもらえる」タイプの保険です。一見お得に見えますが、選ばない理由があります。
利回りの比較
月1万円を30年積み立てた場合の試算:
| 方法 | 合計元本 | 30年後の目安 |
|---|---|---|
| 貯蓄型保険(年率1%) | 360万円 | 約418万円 |
| 新NISA・インデックス投資(年率5%) | 360万円 | 約831万円 |
差額は約400万円。
貯蓄型保険は「保険料の支払い義務」がある分、途中解約すると元本割れします。インデックス投資はいつでも売却できます(元本割れのリスクはありますが、長期では期待値が高い)。
「保険は保険、貯蓄は貯蓄・投資」と分けるのが合理的です。
月5,000円以内に収まる
上記の考えで保険を整理すると、月の保険料はどうなるか試算します。
30代・子ども1人のモデルケース
| 保険 | 内容 | 月額の目安 |
|---|---|---|
| 定期死亡保険 | 死亡時2,000万円・20年間 | 約1,500〜2,500円 |
| がん保険 | 診断一時金100万円 | 約1,000〜2,000円 |
| 合計 | 約3,000〜4,500円 |
月5,000円以内で必要な保障は十分確保できます。
独身・子なし・貯蓄ありのモデルケース
| 保険 | 内容 | 月額の目安 |
|---|---|---|
| がん保険(任意) | 診断一時金100万円 | 約1,000〜2,000円 |
| 合計 | 約1,000〜2,000円 |
独身で扶養家族がいない場合、死亡保険は不要です。
月1万円超の保険料はおかしい
月1万円(年12万円)の保険料を30年払い続けると、合計360万円になります。
保険会社の運営コスト・利益が差し引かれていることを考えると、「払い込んだ総額 > 期待される受取額」になるように設計されています。
月1万円を超えている場合、以下のいずれかが起きています。
- 高額療養費制度で既にカバーされる入院リスクへの二重払い
- 利回りの低い貯蓄型・積立型保険の保険料
- 不要な特約が大量に付いている
- 独身なのに死亡保険に入っている
よくある質問(FAQ)
Q1. 今の保険を解約したら、将来入れなくなりませんか?
A. 持病がある場合は慎重に判断してください。健康な状態では、掛け捨て型の保険は比較的審査が通りやすいです。まず「払済保険(保険料支払いを止め保障を縮小して継続)」や「特約を外す」など部分的な見直しから始めることも選択肢です。
Q2. 子どもができました。保険を増やすべきですか?
A. 増やすべきなのは「死亡保険」だけです。自分に万が一のことがあった場合の不足額を計算し、その分だけ定期保険(掛け捨て)で補います。医療保険等は既に持っている場合、見直しは不要なことが多いです。
Q3. 保険を解約して浮いたお金はどうすればいいですか?
A. まず緊急予備費(生活費3〜6ヶ月分)を現金で確保します。それが完了したら新NISAでインデックス積立に回します。毎月5,000円を30年間年率5%で運用すると、約416万円になります。保険で資産形成するより投資で資産形成する方が、長期では効率的です。
Q4. 学資保険は必要ですか?
A. 学資保険の利回りは年0.5〜2%程度が一般的です。新NISAでインデックスファンドを積み立てた場合の期待利回り(年4〜7%)と比べると、長期では大きな差が生じます。子どもの教育費は新NISAで積み立てる方が合理的なケースが多いです。ただし、リスクを取りたくない場合は学資保険という選択もあります。
まとめ
| 保険の種類 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| 定期死亡保険(掛け捨て) | 扶養家族がいる人のみ必要 | 遺族年金では不足する分を補う |
| がん保険(掛け捨て) | あると安心 | 長期治療のリスクをカバー |
| 医療保険(入院給付型) | 原則不要 | 高額療養費制度でカバーされる |
| 貯蓄型・積立型保険 | 不要 | 利回りが低く、NISAの方が効率的 |
| 学資保険 | 不要 | 新NISAで代替した方が利回りが高い |
月の保険料は5,000円以内が適切。月1万円を超えているなら見直しのサインです。