「オルカン(全世界株式インデックスファンド)を積み立てておけば大丈夫」という話は至るところで見ます。
でも「どれくらいの期間で、どれくらい増えるのか」という具体的なイメージが持てないまま積み立てている人も多いのではないでしょうか。
今回は月3万円の積立を10年続けた場合、過去のデータをもとにどうなる可能性があるかをシミュレーションしてみます。リスクも含めて正直に書きます。
オルカン(全世界株式)とは
「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」が代表的な商品です。通称「オルカン」。
全世界の株式市場に分散投資するインデックスファンドで、約50カ国・3,000銘柄以上に投資します。
主な特徴:
- 信託報酬(コスト):年0.05775%(業界最低水準)
- 米国株式が約60%を占める(ACWI指数に連動)
- 新興国・先進国の株式をカバー
- 積立NISAやつみたてNISAで購入できる
コストが非常に安く、世界中の経済成長に乗れるという設計から、長期積立の基本として広く推薦されています。
月3万円・10年積立のシミュレーション
元本:3,600,000円(月30,000円 × 12ヶ月 × 10年)
想定利回りを3パターンで試算します。
パターンA:年利3%(保守的なシナリオ)
世界株式市場が停滞気味で、インフレ分程度しか成長しない場合。
10年後の残高:約4,180,000円 利益:約580,000円
元本の116%。銀行預金よりは良いが、「大きく増えた」とは言いにくい。
パターンB:年利5%(中程度のシナリオ)
全世界株式の長期平均に近い水準。過去30年の平均的なパフォーマンスに近い。
10年後の残高:約4,660,000円 利益:約1,060,000円
元本の129%。100万円以上のリターンになる。
パターンC:年利7%(楽観的なシナリオ)
2010年代のような世界株式市場の好調な局面が続く場合。
10年後の残高:約5,230,000円 利益:約1,630,000円
元本の145%。160万円以上のリターン。
過去の全世界株式の実績
「年利5〜7%」という想定は、根拠はあるのか。過去のデータを確認します。
MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)の過去実績:
- 過去10年(2014〜2024年):年平均リターン 約8.5%(円換算)
- 過去20年(2004〜2024年):年平均リターン 約7.2%(円換算)
- 過去30年(1994〜2024年):年平均リターン 約6.8%(円換算)
ただし、この数字は「円安の影響を大きく含む」点に注意が必要です。
特に2022年以降は急激な円安が進み、ドル建ての投資信託は円換算で大きく膨らみました。「為替が元に戻れば、円換算のリターンは下がる」という見方もあります。
ドル建て(為替影響を除いた)の実績で見ると:
- 過去10年:年平均 約9.3%(USD)
- 過去20年:年平均 約8.1%(USD)
こちらは比較的高い水準。「年利5〜7%」という想定は「過去と同程度かやや保守的」と言えます。
「積立投資」の強さ:ドルコスト平均法
積立投資の大きなメリットは、毎月同じ金額を定額で買い続けることで「高いときに少なく、安いときに多く買える」ことです。
これを「ドルコスト平均法」と呼びます。
例えば月30,000円の積立で:
- 価格が高い(1口10,000円):3口購入
- 価格が安い(1口6,000円):5口購入
暴落時は「同じ金額で多く買える」ので、回復したときに大きく利益が出やすい。
これは一括投資との大きな違いです。一括投資は「買ったタイミング」が重要になりますが、積立は「時間分散」によってタイミングリスクが自然に小さくなります。
暴落があった場合のシナリオ
「積立中に暴落が来たらどうなるか」も考えておく必要があります。
過去の主な暴落:
- 2008年リーマンショック:全世界株式が約50%下落
- 2020年コロナショック:全世界株式が約30%下落(その後急回復)
- 2022年下落相場:約20%下落(1年かけてじわじわ)
コロナショックは「暴落→急回復」のパターンで、積立を継続していた人は暴落後に大きく増やせました。
リーマンショック型の大暴落では、回復まで3〜4年かかりました。でも積立を続けた場合、暴落中に「安く大量に買える」ため、回復後のリターンは一括投資より良くなるケースが多いことが知られています。
「10年で確実に増える」は保証されているか
正直に言うと、「確実に増える」という保証はありません。
10年の積立でも元本割れするシナリオは理論上あります。例えば:
- 積立終了直後に大きな暴落が来た場合
- 世界経済が長期停滞に入った場合(日本の「失われた30年」のような状態が世界規模で起きる)
ただし、過去の実績を見ると:
- 世界株式インデックスで10年以上積み立てた場合、元本割れの事例は非常に少ない
- 20年以上の保有になると、現代の歴史ではほぼ全期間でプラスになっている
「10年積み立てれば大丈夫」と断言はできないが、「10年積み立てれば、確率的にプラスになる可能性が非常に高い」というのが現実的な評価です。
月3万円の積立は「いつ始めるべきか」
「今が買い時か」「もう少し待った方がいいか」と考える気持ちは理解できます。
でも積立投資に「完璧なタイミング」はありません。
過去のデータで繰り返し確認されていることは、「早く始めた人ほど有利」という事実です。
月3万円を始めるタイミングによる20年後の差(年利5%想定):
- 今すぐ始める:元本7,200,000円 → 残高約12,300,000円
- 3年後に始める:元本6,480,000円 → 残高約10,200,000円
- 5年後に始める:元本5,400,000円 → 残高約8,000,000円
3年の差が4,300,000円の差になる。
「今は相場が高い気がする」「もう少し勉強してから」と考えている間に、大きな機会を失っていきます。
積立NISAと新NISAの違い
2024年から始まった「新NISA」は、旧NISA・積立NISAより大幅に改善されています。
新NISAのメリット(旧制度との比較):
| 項目 | 旧積立NISA | 新NISA(つみたて枠) |
|---|---|---|
| 年間投資上限 | 40万円 | 120万円 |
| 非課税期間 | 20年 | 無期限 |
| 生涯投資上限 | 800万円 | 1,800万円(成長投資枠含む) |
| 引き出し | いつでも可 | いつでも可 |
年間120万円まで積み立てられるようになったため、月3万円(年36万円)なら新NISAのつみたて枠内で全額非課税で運用できます。
投資で得た利益に本来かかる税金(約20%)がゼロになる。
月3万円・10年で100万円の利益が出た場合、通常なら約20万円の税金がかかりますが、NISAなら0円。この差は非常に大きい。
積立を始める前に確認しておくこと
投資を始める前に、以下を確認しておくことをおすすめします。
①生活費3〜6ヶ月分の現金を確保する
投資は「使う予定のないお金」でやることが大前提。
緊急時(病気・失業・急な出費)に対応できる現金がないと、相場が悪いタイミングで投資を売却せざるを得なくなります。
②毎月いくら投資に回せるか把握する
手取りから生活費・固定費を差し引いて、余裕を持って投資に回せる金額を設定する。
最初は月5,000円でもいい。続けられる金額から始める。
③投資商品はシンプルに選ぶ
全世界株式インデックス一本、または全世界株式+国内債券の2本など、シンプルな構成が管理しやすく、長続きする。
複雑な商品を複数持つと管理が大変になり、判断に迷うことが増える。
10年後に向けて今日できること
シミュレーションの数字を見ると「月3万円で100万円以上の利益」は現実的な目標に見えます。
でも「10年後」という目標は、「今日始めるかどうか」で大きく変わる。
「来月から始めよう」が「来年から始めよう」になって、10年後に「もっと早く始めればよかった」という後悔をしている人をたくさん見てきました。
今日の一歩が10年後の大きな差になる。それが積立投資の本質です。
マネーフォワード ME
NISA口座の積立状況と資産残高の推移を管理できます。「今のペースで積み立て続けると何年後にいくらになるか」を見える化して、積立のモチベーション維持に役立ちます。