この記事で分かるのは、月給で働いている人が、自分の給料が2026年度の最低賃金を下回っていないかを、給与明細1枚で確かめる方法です。
先に結論を書きます。
- 2026年度の最低賃金は全国加重平均1,177円(前年度から56円アップ)。兵庫は1,172円、東京は1,280円
- 発効日は10月1日から12月2日まで、県によってバラバラ。京都は11月16日、沖縄は12月2日
- 最低賃金は時給のバイトだけの話ではない。月給の人も「時給に直して」比べる
- 比べるのは額面の給料から、通勤手当・皆勤手当・家族手当・残業代を抜いた金額
- 兵庫・年間休日120日なら、その金額が月191,427円以上必要。年間休日105日なら月203,147円以上
「月給19万円」は、兵庫だと足りていない可能性があります。
東京なら、月20万円でも足りないことがあります。
2026年度の最低賃金はいくらになったか
厚生労働省が公表している「令和8年度 地域別最低賃金 全国一覧」から、主な都道府県を抜き出しました。
| 都道府県 | 2026年度 | 前年度 | 引き上げ額 | 発効日 |
|---|---|---|---|---|
| 東京 | 1,280円 | 1,226円 | 54円 | 10月1日 |
| 神奈川 | 1,279円 | 1,225円 | 54円 | 10月1日 |
| 大阪 | 1,231円 | 1,177円 | 54円 | 10月1日 |
| 埼玉 | 1,196円 | 1,141円 | 55円 | 10月1日 |
| 愛知 | 1,195円 | 1,140円 | 55円 | 10月1日 |
| 京都 | 1,180円 | 1,122円 | 58円 | 11月16日 |
| 兵庫 | 1,172円 | 1,116円 | 56円 | 10月1日 |
| 北海道 | 1,131円 | 1,075円 | 56円 | 10月1日 |
| 福岡 | 1,114円 | 1,057円 | 57円 | 10月4日 |
| 熊本 | 1,092円 | 1,034円 | 58円 | 12月1日 |
| 沖縄 | 1,086円 | 1,023円 | 63円 | 12月2日 |
| 宮崎 | 1,085円 | 1,023円 | 62円 | 10月24日 |
| 全国加重平均 | 1,177円 | 1,121円 | 56円 | ― |
いちばん高いのは東京の1,280円、いちばん低いのは宮崎の1,085円です。
差は195円あります。
引き上げ額で見ると、佐賀の65円、鹿児島の64円が大きく、東京・神奈川・大阪の54円が小さい。低い県ほど大きく上がっていて、差は少しずつ縮まっています。
注意したいのは発効日です。
10月1日に一斉に上がるわけではありません。
47都道府県のうち、10月1日に発効するのは15都道府県だけ。あとは10月の途中から12月2日まで、ばらけています。
関西でいうと、兵庫・大阪は10月1日なのに、京都は11月16日。神戸に住んで京都で働いている人は、1か月半ずれることになります。
最低賃金は「住んでいる県」ではなく**「働いている事業所がある県」**で決まるので、ここは間違えやすいところです。
つまり、10月の時点で「まだ上がっていない」のが正しい県もあります。自分の県の日付だけ、先に確認しておいてください。
月給の人も対象になる
最低賃金というと、コンビニやスーパーの時給の話に聞こえます。
でも、最低賃金法は正社員にも契約社員にも、月給にも日給にも適用されます。
月給の人は、月給を時給に直してから最低賃金と比べます。
厚生労働省の計算式はこれです。
月給 ÷ 1か月の平均所定労働時間 ≧ 最低賃金(時間額)
「1か月の平均所定労働時間」は、会社の就業規則で決まっている年間の労働日数から出します。
(365日 − 年間休日)× 1日の所定労働時間 ÷ 12か月
たとえば、年間休日120日・1日8時間の会社なら、
(365 − 120)× 8 ÷ 12 = 約163.3時間
年間休日105日・1日8時間なら、
(365 − 105)× 8 ÷ 12 = 約173.3時間
休みが少ない会社ほど、1か月の労働時間が長くなります。
同じ月給でも、時給に直すと安くなる。
つまり、休みが少ない会社で月給が低めの人ほど、最低賃金に引っかかりやすいということです。
「月給」から抜くものがある
ここがいちばん大事なところです。
最低賃金と比べる月給は、給与明細の「総支給額」ではありません。
厚生労働省は、最低賃金の対象になるのは「毎月支払われる基本的な賃金」だとしていて、次のものは計算から除くと決めています。
| 除くもの | 例 |
|---|---|
| 臨時に支払われる賃金 | 結婚手当など |
| 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金 | 賞与(ボーナス) |
| 所定労働時間を超えた労働の賃金 | 残業代(時間外手当) |
| 所定の休日に働いた分の賃金 | 休日出勤手当 |
| 深夜(午後10時〜午前5時)の割増分 | 深夜手当 |
| 精皆勤手当・通勤手当・家族手当 | 皆勤手当、交通費、扶養手当 |
逆に、基本給と、職務手当・役職手当・資格手当のような毎月決まって出る手当は含めます。
「固定残業代」「みなし残業手当」も、中身は残業に対する賃金なので、除いて考えます。
ここで効いてくるのが、明細の見た目と中身のズレです。
たとえば、兵庫の会社で、明細がこうだったとします。
| 項目 | 金額 | 最低賃金の計算に |
|---|---|---|
| 基本給 | 170,000円 | 入れる |
| 職務手当 | 20,000円 | 入れる |
| 皆勤手当 | 10,000円 | 除く |
| 通勤手当 | 12,000円 | 除く |
| 固定残業代 | 30,000円 | 除く |
| 総支給 | 242,000円 | ― |
総支給は24万円を超えていて、一見すると最低賃金とは無縁に見えます。
でも、計算に使うのは基本給と職務手当だけ。190,000円です。
これを時給に直すと、
- 年間休日120日(163.3時間)なら、190,000 ÷ 163.3 = 約1,163円
- 年間休日105日(173.3時間)なら、190,000 ÷ 173.3 = 約1,096円
兵庫の新しい最低賃金は1,172円なので、どちらも下回ります。
年間休日105日のほうだと、足りない額は月13,147円。1年で約15.8万円です。
去年までの1,116円なら、年間休日120日のほうは足りていました(1,163円>1,116円)。
今年の引き上げで、同じ給料のまま「足りない側」に入る人が出る、というのがこの話の本題です。
都道府県別:月いくら以上あればいいか
計算が面倒な人のために、よく使われる2パターンで「最低ライン」を月額にしました。
ここでいう金額は、**基本給+毎月決まって出る手当(皆勤・通勤・家族・残業代を除く)**の合計です。
| 都道府県 | 最低賃金 | 年間休日120日 | 年間休日105日 |
|---|---|---|---|
| 東京 | 1,280円 | 209,067円 | 221,867円 |
| 神奈川 | 1,279円 | 208,903円 | 221,693円 |
| 大阪 | 1,231円 | 201,063円 | 213,373円 |
| 埼玉 | 1,196円 | 195,347円 | 207,307円 |
| 愛知 | 1,195円 | 195,183円 | 207,133円 |
| 京都 | 1,180円 | 192,733円 | 204,533円 |
| 全国平均 | 1,177円 | 192,243円 | 204,013円 |
| 兵庫 | 1,172円 | 191,427円 | 203,147円 |
| 北海道 | 1,131円 | 184,730円 | 196,040円 |
| 福岡 | 1,114円 | 181,953円 | 193,093円 |
| 宮崎 | 1,085円 | 177,217円 | 188,067円 |
※1日の所定労働時間8時間で計算。1円未満は四捨五入。
東京で年間休日105日の会社なら、基本給と手当で22万円ちょっとが必要になります。
「月給20万円」の求人票を見て、最低賃金より上だと思い込むのは危ない、ということです。
逆に、1日の所定労働時間が7時間半の会社なら、1か月の時間が短くなるので、必要な月給は少し下がります。
正確に知りたい人は、自分の会社の年間休日と1日の所定時間で計算してください。
厚生労働省のサイトには、数字を入れるだけで判定できる「最低賃金セルフチェックシート」(Excel)もあります。
いつの給料から上がるのか
もう1つ、よく混乱するのが「いつの給料に反映されるか」です。
最低賃金は、発効日以降に働いた分に適用されます。
給料日ではなく、働いた日で決まります。
だから、たとえば「月末締め・翌月25日払い」の会社で、発効日が10月1日なら、
- 10月25日に振り込まれる給料 → 9月に働いた分なので、旧の最低賃金のままでいい
- 11月25日に振り込まれる給料 → 10月に働いた分なので、新しい最低賃金が必要
10月の明細を見て「上がってない」と焦らなくて大丈夫です。
見るべきは、10月に働いた分の給料の明細です。
20日締めの会社なら、10月1日から20日までの分が、最初に新しい金額の対象になります。
京都のように11月16日発効の県なら、11月16日以降に働いた分から。月の途中から切り替わるので、会社によって処理のしかたが違います。
下回っていたら、どうなるのか
最低賃金を下回る金額で契約していても、その部分は法律上無効になり、最低賃金と同じ額で契約したものとみなされます(最低賃金法第4条)。
つまり、会社には差額を払う義務があります。
地域別最低賃金を下回った場合、会社には50万円以下の罰金という罰則もあります(最低賃金法第40条)。
とはいえ、いきなり労働基準監督署に行く必要はないと僕は思っています。
多くの場合、会社側が単純に計算を見落としているだけだからです。
とくに、基本給を低めにして手当で総額を作っている会社は、総支給額だけ見て「最低賃金は余裕で超えている」と思い込みやすい。
最初は、人事や総務に「最低賃金の計算で、基本給と職務手当だけで足りていますか」と聞くくらいで十分だと思います。
それで話が進まないときは、都道府県労働局や労働基準監督署に相談できます。
月給の人でも「関係ない」とは言い切れない
僕は資材の管理と発注の仕事をしていて、月給で働いてきました。
転職も4回しています。
いま5回目の転職先を探していて、求人票を見る機会が多いんですが、目に入るのはだいたい「月給◯万円〜」という総額です。
その中に固定残業代や皆勤手当がどれだけ入っているかは、細かい条件のところまで読まないと分かりません。
月給だと、どうしても「最低賃金はバイトの話」と思ってしまうんですよね。分かっていても、総額のほうに目が行きます。
でも、計算してみると、総支給が24万円あっても、中身しだいでは足りていないことがありえます。
給料の総額は変わっていないのに、最低賃金のほうが毎年上がっていく。
ここ数年は毎年50円以上上がっているので、去年大丈夫だった人が、今年は足りなくなる。
これが、月給の人も年に1回は見ておいたほうがええと僕が思う理由です。
一方で、基本給だけで上の表の金額を超えている人は、この記事の計算は必要ありません。
そういう人は、明細を開くまでもなく大丈夫です。
今日できること
給与明細を1枚出して、これだけ見てください。
- 基本給と、毎月決まって出る手当(職務・役職・資格など)を足す
- 皆勤手当・通勤手当・家族手当・残業代・固定残業代は足さない
- 上の表で、自分の県・自分の会社に近い年間休日の金額と比べる
- 足りていなければ、自分の県の発効日以降に働いた分の明細で直っているか確認する
5分もかかりません。
最低賃金がそもそも何で決まっているか、今年どう議論されてきたかは、最低賃金2026の見通しの記事に書いています。
パートで週20時間以上働いている人は、10月から社会保険の加入条件も変わっています。「106万円の壁」が消える記事も合わせてどうぞ。
年末調整で所得税がいくら戻るかは、2026年の年末調整の記事で計算しています。
まとめ
- 2026年度の最低賃金は全国加重平均1,177円(56円アップ)。東京1,280円・大阪1,231円・兵庫1,172円
- 発効日は10月1日〜12月2日で県ごとに違う。京都11月16日、熊本12月1日、沖縄12月2日
- 月給の人も対象。月給 ÷ 1か月の平均所定労働時間で時給に直して比べる
- 比べる月給からは、皆勤手当・通勤手当・家族手当・残業代(固定残業代を含む)・賞与を除く
- 兵庫・年間休日120日なら月191,427円、105日なら月203,147円以上が目安
- 反映は発効日以降に働いた分から。月末締め翌月払いなら、11月に振り込まれる給料から
- 足りなければ会社に差額の支払い義務がある。まずは人事・総務に確認を
最低賃金の引き上げは、時給で働く人だけのニュースに見えます。
でも、基本給が低めの会社で月給で働いている人にとっても、自分の給料の「底」が1年で56円ぶん上がる話です。
一度だけ計算しておけば、来年からは表の数字を見直すだけで済みます。
本記事は、厚生労働省「令和8年度 地域別最低賃金 全国一覧」「最低賃金の対象となる賃金」「最低賃金額以上かどうかを確認する方法」、最低賃金法(第4条・第40条)をもとに、家計の見直しを続けている会社員が執筆しています。月額の目安は1日8時間・記載の年間休日で単純計算したもので、実際の判定は各社の就業規則上の所定労働時間で行います。個別の労働条件については、都道府県労働局または労働基準監督署にご相談ください。制度は変更される場合があります。最新情報は厚生労働省の公式サイトをご確認ください。