廃盤になったゴルフバッグや、もう手に入らない絶版本。「これ、探してたやつや」というものを見つけたとき、値段が相場よりだいぶ安いと、ラッキーと思う前に一瞬立ち止まってほしい話があります。
僕自身、以前欲しかった品切れグッズを検索していて、見慣れないショップ名のサイトが相場よりかなり安く出てきて「お、あるやん」と思わずカートに入れかけたことがあります。結局そのときは商品ページの日本語が少し引っかかって手を止めましたが、正直、あと少しで注文していたと思います。
今回、消費者庁が2026年8月4日、まさにこのパターンの偽通販サイトを名指しで公表しました。しかも手口の核心は「代金をだまし取られる」だけでなく、その後に届く「返金します」という連絡が、スマホの遠隔操作要求にまでつながっているという点です。今日はこの発表内容を、数字とともに整理します。
消費者庁が名指しした3サイト、被害額130万円
消費者庁が消費者安全法にもとづいて公表したのは、次の3つのサイトです。
- 「竜の野」
- 「STORE専門ショップ」
- 「Sie市場店」
いずれも、限定品のゴルフバッグや絶版になった書籍、入手しにくいゲーム関連グッズといった「探している人がいるレアな品」を、相場よりかなり安く販売しているように見せかけていました。
公表によると、2025年1月から2026年6月までの間に、この3サイトに関する消費者相談が104件寄せられ、そのうち86件では実際に商品代金を支払い済みでした。被害額は合計で130万円にのぼります。1件あたりに直すと1万5千円前後ですが、件数の多さと、後述する手口の悪質さがこの発表のポイントだと僕は感じました。
サイトに記載されていた事業者の所在地や連絡先は、確認したところ実体がないものだったとされています。使われていたドメインも日本国外のものが中心で、なかにはロシア関連のドメインも含まれていました。「.co.jp」のような日本企業らしいドメインではない時点で、本来はもう一段警戒すべきサインです。
手口の流れ——怖いのは「支払った後」
この手口が厄介なのは、代金をだまし取られて終わりではないところです。消費者庁の発表と関連報道を整理すると、流れはこうなっています。
- 検索や広告経由で、限定品・絶版品を格安で扱う偽サイトにたどり着く
- 口座振込・コンビニ払い・クレジットカード払い・PayPayのいずれかで代金を支払う(口座振込の場合、振込先は個人名義とみられる口座)
- 支払い後、数日以内に「発送手続きを開始しました」というメールが届く
- その後、「【至急】返金手続きに関するご連絡」という件名のメールが送られてくる
- メールに添付された二次元コードから、LINEの「友だち追加」を求められる
- LINEのトークやビデオ通話に誘導され、「返金のため」という名目で、スマートフォンの遠隔操作を許可するよう要求されることがある
- 実際には返金は行われない
ここ、一度冷静に読んでみてほしいんです。普通の詐欺なら「お金を払ったら音信不通」という展開を想像しますよね。でもこの手口は、「欠品だったので返金します」という、こちらを安心させる連絡から本番が始まるんです。「あ、良心的なショップやったんや」と油断した瞬間に、LINE誘導、そして遠隔操作の要求まで進んでしまう。だまし取る金額そのものより、この段階の踏ませ方に、正直かなり悪質さを感じました。
スマートフォンを遠隔操作されると、住んでいる場所や連絡先はもちろん、決済アプリや銀行アプリの操作まで相手の目の前で行われてしまいます。実際、似た「遠隔操作アプリを入れさせて送金させる」というパターンは、副業詐欺でも報告されています(「いいねを押すだけ」のその副業、投資詐欺への入り口かもしれません)。手口の入り口は「通販」と「副業」で違っても、最後に「遠隔操作」に行き着く構図はよく似とうと感じます。
見分ける一線は3つ
細かい手口はこれからも形を変えていくはずなので、個別の特徴を全部覚えるより「これに当てはまったら注文しない・進めない」というルールを持っておくほうが実用的です。
一つ目。相場より極端に安い「限定品」「絶版品」は、まず疑ってかかる。 本当にレアなものほど、正規のフリマサイトや専門店でもそれなりの値がつきます。「なぜこんなに安いのか」の理由が説明されていないサイトは要注意です。消費者庁も、フリマサイトの商品画像がそのまま転用されているケースがあったと指摘しています。
二つ目。支払い後に届く「返金します」の連絡ほど、慎重に扱う。 今回の手口の怖さはまさにここでした。「返金」という言葉は本来こちらを安心させるものですが、その手続きと称してLINE誘導や遠隔操作を求めてくる時点で、正規の返金対応ではありません。まっとうな通販サイトが、返金のために個人のスマートフォンを遠隔操作する必要は基本的にありません。
三つ目。日本語の不自然さ・振込先の名義・ドメインを一度は確認する。 サイトの文章が機械翻訳っぽい、振込先が会社名ではなく個人名義、URLが聞き慣れない海外ドメインである——このどれか一つでも当てはまったら、その場で注文を進めるのをやめて、一度検索窓に「サイト名 詐欺」と打ち込んでみるくらいでちょうどいいと思います。
未払いのSMSから送金に誘導する手口についても、以前「一線」で整理したことがあります(その未払いSMS、送金させようとしていませんか)。手口の入り口はそれぞれ違っても、「急かされたら、まず立ち止まる」という判断の軸は共通しとうと感じます。
もし注文してしまっていたら
「もう支払ってしまった」「二次元コードからLINEを追加してしまった」という場合でも、諦める前にできることがあります。
- クレジットカードで支払った場合は、カード会社にすぐ連絡してチャージバック(支払い停止)の相談をするのが最初の一歩です。決済から時間が経つほど対応が難しくなることがあるので、気づいた時点で早めに連絡することをおすすめします
- 銀行振込の場合、振込先の金融機関名・支店名・口座名義・振込日時をメモした上で、振込先の金融機関に連絡し、振り込め詐欺救済法にもとづく口座凍結の対象になるか確認してもらいましょう
- すでにスマートフォンの遠隔操作を許可してしまった場合は、まず該当のアプリを削除し、決済アプリ・銀行アプリのパスワードをすべて変更してください。少しでも不安があれば、キャリアショップや警察のサイバー犯罪相談窓口にも相談するのが安心です
- 消費者ホットライン「188(いやや!)」に電話すると、最寄りの消費生活センターにつながります。今回のような事案そのものずばりを、消費者庁の消費者政策課財産被害対策室(03-3507-8800)でも受け付けています
一人で「だまされた自分が悪い」と抱え込まず、まず話してみることが最初の一歩です。相談したからといって、必ず責められるわけではありません。
災害の直後に増える義援金詐欺も、「急いで」「今だけ」と急かして冷静な判断をさせない構図はよく似ています(その義援金、本当に届きますか)。手口の見た目は毎回違っても、急かされたら止まる、というのが結局いちばん効く一線なんやろうと思います。
まとめ
- 消費者庁が2026年8月4日、限定品・絶版品を格安で売るように装う偽通販サイト「竜の野」「STORE専門ショップ」「Sie市場店」を公表
- 2025年1月〜2026年6月の相談件数104件、うち86件が支払い済み、被害額合計130万円
- 手口の核心は支払い後——「発送メール」の後に届く「返金手続き」という名目の連絡が、LINE誘導・スマホの遠隔操作要求につながる
- 見分ける一線=①極端に安い限定品はまず疑う ②返金の連絡ほど慎重に扱う ③日本語・振込先名義・ドメインを一度確認する
- 支払ってしまった場合はカード会社へのチャージバック相談、遠隔操作を許可してしまった場合はアプリ削除とパスワード変更を最優先に
- 相談窓口は188(消費者ホットライン)、事案専用は消費者庁消費者政策課財産被害対策室(03-3507-8800)
「安い」「レア」という言葉に気持ちが動いた瞬間こそ、一度手を止めるタイミングです。届いた「返金します」の連絡を鵜呑みにせず、公式サイトや消費生活センターで確かめる。それだけで、防げる被害はかなりあるはずです。
本記事は、NISA・家計改善を実践する会社員が、消費者庁の公開情報をもとに執筆しています。
本記事は2026年8月時点の情報に基づいています。消費者庁の発表内容は今後変更・追加される可能性があります。同様の手口に遭われた場合は、速やかに消費生活センター(188)またはお近くの警察にご相談ください。