社会人になって10年以上、毎月の給与明細を「なんとなく」しか見ていませんでした。
「総支給額からいろいろ引かれて、手取りが残る」という認識しかなかった。
あるとき「ふるさと納税の控除額を計算しよう」と思ったら、税金の仕組みを全然理解していないことに気づいた。
改めて一から整理したら、「なぜ手取りが減るのか」と「どうすれば税金が減るのか」がはっきり見えてきました。
給与明細から引かれているもの
給与明細の「控除」欄には、大きく3種類が含まれています。
①社会保険料
- 健康保険料
- 厚生年金保険料
- 雇用保険料
- (40歳以上は介護保険料)
②所得税
- 毎月「源泉徴収」として天引き
- 年末調整で最終的な額が確定する
③住民税
- 前年の所得に対して計算される
- 毎月1/12ずつ天引き
これらの合計が「手取りが減る」原因です。
社会保険料の仕組み
社会保険料は「給与(標準報酬月額)」に対して一定割合で計算されます。
2024年度の目安(従業員負担分):
| 種類 | 料率(目安) | 給与30万円の場合 |
|---|---|---|
| 健康保険料 | 約5% | 約15,000円 |
| 厚生年金保険料 | 9.15% | 約27,450円 |
| 雇用保険料 | 0.6% | 1,800円 |
| 合計 | 約15% | 約44,250円 |
給与30万円に対して、社会保険料だけで月4万円以上が引かれます。
社会保険料は会社も同額(または同程度)を負担しているので、「会社が負担している部分を含めると給与コストは2割増し」という状況です。
社会保険料は原則として節税の対象外(控除できない)ですが、iDeCoの掛金は社会保険料の計算対象外になるため、一部の節税効果があります。
所得税の計算のしかた
所得税は「課税所得」に対して累進課税で計算されます。
ステップ①:給与収入から「給与所得控除」を引く
給与収入がそのまま課税されるわけではなく、「給与所得控除」(経費的なもの)を引きます。
| 給与収入 | 給与所得控除 |
|---|---|
| 162.5万円以下 | 55万円 |
| 162.5〜180万円 | 収入×40%−10万円 |
| 180〜360万円 | 収入×30%+8万円 |
| 360〜660万円 | 収入×20%+44万円 |
| 660〜850万円 | 収入×10%+110万円 |
| 850万円超 | 195万円(上限) |
例:年収500万円の場合 給与所得控除 = 500万円 × 20% + 44万円 = 144万円 給与所得 = 500万円 − 144万円 = 356万円
ステップ②:所得控除を引く
給与所得からさらに「所得控除」を引きます。
- 基礎控除:48万円(全員)
- 社会保険料控除:実際に払った社会保険料の全額
- 配偶者控除・扶養控除:条件を満たす場合
- 生命保険料控除・地震保険料控除
- iDeCo(小規模企業共済等掛金控除)
- ふるさと納税(寄附金控除)
例:年収500万円・社会保険料年70万円・基礎控除48万円・iDeCo年間27.6万円(月2.3万円)の場合
課税所得 = 356万円 − 48万円 − 70万円 − 27.6万円 = 210万円強
ステップ③:税率を掛ける(累進課税)
| 課税所得 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 0円 |
| 195〜330万円 | 10% | 9.75万円 |
| 330〜695万円 | 20% | 42.75万円 |
| 695〜900万円 | 23% | 63.6万円 |
| 900〜1,800万円 | 33% | 153.6万円 |
| 1,800〜4,000万円 | 40% | 279.6万円 |
| 4,000万円超 | 45% | 479.6万円 |
課税所得210万円の場合: 所得税 = 210万円 × 10% − 9.75万円 = 11.25万円
住民税の仕組み
住民税は所得税とは別に計算されます。
特徴:
- 前年の所得に対して計算される(1年遅れ)
- 毎年6月から翌年5月にかけて給与天引き
- 税率は一律10%(都道府県民税4% + 市区町村民税6%)
- 均等割(約5,000円)も追加される
住民税の課税所得も所得税とほぼ同様の方法で計算しますが、控除額が一部異なります(基礎控除が43万円など)。
例:年収500万円・課税所得200万円(概算)の場合 住民税 = 200万円 × 10% + 5,000円 = 20.5万円/年
月換算:約1.7万円
手取り計算の実例
年収500万円の会社員の概算手取りを計算します。
収入:
- 年収(総支給):500万円
引かれるもの:
- 社会保険料:約70万円(14%)
- 所得税:約11万円
- 住民税:約20万円
手取り: 500万 − 70万 − 11万 − 20万 = 約399万円
月換算:約33.2万円
「年収500万円なのに手取りは400万円を下回る」という現実です。
節税の基本——「課税所得を減らす」
所得税・住民税を減らすには、「課税所得を減らす」のが基本です。
課税所得が減れば税金が減り、手取りが増える。
会社員が使える主な節税手段:
iDeCo(個人型確定拠出年金)
掛金が全額「所得控除」になります。
年収500万円で月2.3万円(年27.6万円)のiDeCoを使うと:
- 所得税の節税:27.6万円 × 10% = 2.76万円/年
- 住民税の節税:27.6万円 × 10% = 2.76万円/年
- 合計:年間約5.5万円の節税
ふるさと納税
寄附額から2,000円を引いた金額が、所得税・住民税から控除されます。
年収500万円の場合、おおよそ6〜7万円のふるさと納税が実質2,000円の自己負担で可能です。
返礼品の価値が実質2,000円以上あれば、経済的なプラスになります。
生命保険料控除
年間払込保険料に応じて、最大4万円(所得税)の控除が使えます。
ただし節税効果は「4万円 × 税率」なので、最大でも4万円 × 10% = 4,000円。過度に期待しないことが重要です。
医療費控除
1年間の医療費が10万円を超えた場合、超えた分が控除になります。
確定申告が必要ですが、会社員でも申告できます。
「税金を払っていること」をどう捉えるか
税金は「取られている」感覚がありますが、使い方を知ると「回収できる部分がある」と見方が変わります。
iDeCoやふるさと納税を使えば、年収500万円の会社員でも年間10万円以上の節税が現実的です。
これを「10年間使い続ける」と100万円超の差になります。
「税金の仕組みを理解して、使える制度を使う」のが、一番コストゼロで手取りを増やす方法です。
難しそうに見えますが、iDeCoとふるさと納税の2つを始めるだけで、多くの会社員にとって実感できる節税になります。
マネーフォワード ME
給与明細・社会保険料・所得税・住民税を一括管理して、年間の手取り額を把握できます。iDeCoやふるさと納税の節税効果を試算するための「現状把握」として使えます。