昨日(2026年8月7日)、人事院が勧告を出しました。
ニュースの見出しは「国家公務員の月給を平均3.51%引き上げ」。ここだけ見ると「公務員の話やな」で終わってしまいます。私も去年までは、正直そう思って読み飛ばしていました。
でも、これは会社員にとってこそ意味のある数字です。
理由は仕組みにあります。人事院勧告は「公務員の給料をいくらにするか」を民間企業の実地調査で決める制度だからです。つまりこの3.51%という数字は、国が「民間の給料はこれだけ上がっている」と計測した結果そのものなんです。
今回はここを整理します。そのうえで、「じゃあ自分の給料は実際どうなのか」を確かめる方法まで書きます。
昨日決まったこと
報道によると、勧告の中身はこうです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 月給 | 平均 3.51%(1万5056円)引き上げ |
| 初任給 | 9,500円 引き上げ |
| 期末・勤勉手当 | 0.05カ月増の年 4.70カ月 |
| 改定率 | 全ての役職段階で3%以上 |
| 連続性 | 5年連続のプラス改定。3%超は2年連続 |
| 年間給与 | 平均で約 26万7000円 の増加 |
| 新設 | 転居手当(2027年度から) |
前年度は34年ぶりに3%を超えた年でした。それに続いて今年も3%超。2年連続で高水準ということになります。
大卒総合職の初任給は年20万4000円増えて514万6000円。50歳の本府省課長は年41万円増えて1488万3000円、と報じられています。
なぜ会社員に関係があるのか
ここが本題です。
公務員には、ストライキなどの労働基本権に制約があります。自分たちで給料の交渉ができない。その代償措置として、第三者機関である人事院が「民間ではいくら払われているか」を調べ、その水準に合わせるよう勧告する——これが人事院勧告の仕組みです。
今回の勧告書に書かれているのも、まさにその形です。
公務員の月給は、民間を 1万5056円 下回っていた 公務員のボーナスは、民間を 0.07カ月分 下回っていた
だから、その差を埋めるために上げる。**上げる理由が「民間がそれだけ払っているから」**なんです。
つまりこの数字は、公務員の待遇の話であると同時に、民間給与の公式な計測結果でもあります。国が実地調査をして「民間はここまで来ている」と認定した水準、と読み替えられます。
しかも地方公務員の給与も、国の職員の事情を考慮して定めることになっています。多くの自治体がこの勧告を参考にするため、影響範囲は国家公務員だけにとどまりません。
では、民間の給料は本当に上がっているのか
ここで正直に確かめておきたいことがあります。
「国が民間はこれだけ上がったと言っている」のと、「自分の生活が楽になっている」は、別の話だからです。
厚生労働省の毎月勤労統計をもとにしたデータを見ると、こうなっています。
①名目の給料は、たしかに上がっている
2026年1月の現金給与総額は前年比 +3.0%、5月は +3.2%。数字の上では確実に増えています。
②実質賃金は、2026年に入ってプラスに転じた
物価の上昇分を差し引いた「実質賃金」は、2026年1月に前年比 +1.4%。これは2024年12月以来のプラスでした。5月も同じく +1.4% で、2026年に入ってからはプラス基調が続いています。
③ただし、その前は4年連続でマイナスだった
労働政策研究・研修機構(JILPT)によると、2025年の実質賃金は前年比 マイナス1.3%。これで4年連続のマイナスでした。
整理すると、こうです。
4年間目減りし続けて、ようやく今年プラスに戻った。
「賃上げのニュースは毎年見るのに、なぜ楽にならないのか」という感覚は、気のせいではなかったわけです。上がってはいたけれど、物価にずっと負けていた。ようやく追いついたのが今年、というのが実際のところです。
秋に、また消える可能性がある
ここは書いておかないとフェアではないと思います。
複数の民間シンクタンクが、2026年秋以降の下振れリスクを指摘しています。理由は原油価格です。原油高が物価を押し上げると、名目の給料が上がっても実質賃金は削られます。1バレル100ドルを超える水準が長期化した場合、2026年度の実質賃金が再びマイナスになる可能性があるという見方が出ています。
そして足元でも、値上げは続いています。2026年8月は飲食料品だけで2,311品目が値上げ。大王製紙はエリエールなどの紙製品を15%以上引き上げました。ティッシュもトイレットペーパーも上がっています。
つまり今は、**「やっとプラスに戻ったが、その幅は薄く、秋にまた消えるかもしれない」**という位置にいます。
「賃上げされたから大丈夫」と考えるには、まだ早い段階です。
自分の給料を測る、3つの物差し
ニュースの数字は平均です。平均は自分に当てはまりません。自分の数字で確かめないと意味がないので、今日できることを3つ書きます。
①「3.51%は、自分だといくらか」を計算する
月給 × 0.0351
月給30万円なら約10,530円。月給25万円なら約8,775円。年収ベースなら12倍して、月30万円の人で年間およそ12.6万円です。
これが「国が計測した民間の上昇幅」です。自分の昇給がこれに届いているかどうかが、ひとつの目安になります。
②給与明細は「支給額」ではなく前年同月と比べる
今月の明細だけを見ても分かりません。去年の同じ月の明細と並べるのがコツです。残業代や手当の変動を除いて、基本給がいくら動いたかを見ます。
去年の明細が手元にない場合、多くの会社では給与システムから過去分を確認できます。読み方は給与明細の見方にまとめています。
③手取りで確認する。ここが一番ずれる
これが見落としやすいところです。額面が上がると、社会保険料も上がります。健康保険・厚生年金は標準報酬月額で決まるため、額面の上昇に連動して負担も増える。所得税も同様です。
なので「額面が1万円増えた」=「手取りが1万円増えた」ではありません。手取りベースで前年と比べると、実感との差の理由が見えてきます。
届いていなかったとき、どうするか
計算してみて「自分の昇給は3.51%に届いていない」となる人もいると思います。私も過去に、そうやって落ち込んだ年がありました。
ただ、ここで大事なのは落ち込むことではなく、事実として把握しておくことです。数字を知らないまま「なんとなく上がらへんな」と思っているのと、「国の計測は3.51%、自分は1.2%」と分かっているのとでは、次の一手が変わります。
打てる手は、大きく3つです。
- 交渉の材料にする(公的な計測値は客観的な根拠になります → 昇給交渉の進め方)
- 支出側で取り返す(給料は自分で決められませんが、固定費は自分で決められます)
- 収入の柱を増やす
賃上げと物価の関係については、春闘の時点で2026年の賃上げは本当に家計の助けになっているかにまとめました。あわせて最低賃金の引き上げも今年の動きとして押さえておくと、全体像がつかめます。
まとめ
- 2026年8月7日、人事院が国家公務員の月給を平均**3.51%(1万5056円)**引き上げるよう勧告した
- ボーナスは0.05カ月増の年4.70カ月。5年連続のプラスで、3%超は2年連続
- この仕組みは公務員の給与を民間水準に合わせるもの。つまり国が「民間はこれだけ上がった」と計測した結果でもある
- 民間の実質賃金は2025年まで4年連続マイナス(2025年は-1.3%)。2026年に入ってようやく+1.4%とプラス転化した
- ただし秋以降、原油高で再びマイナスに転じるリスクが指摘されている。8月も食品2,311品目が値上げ
- 平均は自分に当てはまらない。月給×0.0351で自分の額を出し、前年同月・手取りベースで比べる
- 今日やる1つ=給与明細を去年の同じ月と並べて、手取りが何%動いたか計算する
ニュースの「3.51%」は、遠い世界の数字ではありません。国が民間を測った物差しです。せっかく出た数字なので、自分に当ててみてください。5分で終わります。
本記事は、NISA・家計改善を実践する会社員が、人事院・厚生労働省・報道機関の公開情報をもとに執筆しています。
本記事は2026年8月8日時点の情報に基づいています。人事院勧告は国会と内閣への勧告であり、この時点で給与改定が確定したものではありません(実施には法改正が必要です)。実質賃金の見通しは民間シンクタンクの試算であり、今後の物価動向により変動します。最新情報は人事院・厚生労働省の公式発表をご確認ください。